- 2024/12/17 掲載
軽商用EVに見るホンダの「超本気」EVシフト、三菱商事との協業に潜む「狙い」とは(2/3)
「約300万」の価格は「高い」のか?
これらの値段を見て、軽商用EVといっても結局は300万円近くするのではないかと、思うかもしれない。だが、自家用(黄色ナンバープレート)としてのCEV(Clean Energy Vehicle)補助金では、乗用車の軽EVであるサクラやeKクロスEVと同じ55万円の支給対象になる。また、事業用の黒ナンバープレートとなる場合は、LEVO(環境優良車普及機構)補助金により約100万円の対象となる。
上記4車種のうち、商用に特化したe: Gとe: L2は、ホンダのリースを前提とした車種で、最も廉価なe: Gの243.98万円に約100万円の補助が適用されれば、144万円ほどとなる。ガソリンエンジン車のN-VANで最も廉価な136.51万円にはおよばないが、8万円弱の差に近づく。購入後の燃料代(電気代)の安さや、オイル交換が不要といった整備費の軽減などを加味すれば、仕事用の生産財として十分に選択肢になり得るだろう。
ちなみに、「Honda ON(ホンダ オン)」というリースプランでは、月に3000km(年間で3万6000km)以内の走行で6年契約の場合、e: Gの月額は3万1,840円(頭金=補助金額、ボーナス払い5万円×2回ありの場合)からという事例が紹介されている。
月に3000km以内とは、1日約100kmと計算できるので実用に適うはずだ。
エンジン商用車と圧倒的に違う「乗り心地」
ではN-VAN e:の性能面はどうなのだろうか。筆者が実際に運転したところ、アクセルペダルを踏むと、かなり勢いよく発進した。これは、軽商用車として300~350kgの荷物を積んでも、ゆとりある発進ができるようにした性能の証だ。
シフトボタンをDからBへ切り替えると、アクセルペダルを戻した際の回生の効きが強まる。完全停止まではできないので、ワンペダル機能とは言えないが、市街地などでこれを常用すれば、操作が楽になるだけでなく、ブレーキパッドの減りを抑えられ、保守管理費を低減できるだろうと想像できる。
路地など含めカーブを曲がる際は、床下に搭載された29.6kWhのリチウムイオンバッテリーによって、低重心となり、操縦性が安定する。これに、トルクの大きなモーターの出足を合わせると、かなり壮快な走りを満喫できる。
また、EVであるから、当然ながら静粛性に優れる点も特徴だ。一般に、商用車はエンジン音による車内騒音が大きく、運転していて疲労感を感じる傾向がある。これは、車両価格を下げるため遮音材や防音材が省かれているという事情に起因する。
しかし、モーター走行であるEVなら、乗用車のように静かだ。なおかつ前述したように、バッテリーの重さが加わり乗り心地も落ち着く。
つまり、EVになると商用車が乗用車のような乗り味となり、運転中の疲労が大幅に軽減される。仕事を終えて駐車場に戻れば、そのまま夜間に充電することで翌日の支度が整う。あえて、仕事帰りにガソリンスタンドに立ち寄る必要もない。排出ガスゼロという環境対応だけでなく、労働環境も良くなるのが、商用EVの利点だ。 【次ページ】三菱商事との「新会社」設立は何を意味する?
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