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NFT(非代替性トークン)への注目が高まっている。Twitter創業者のジャック・ドーシー氏の初ツイートNFTが2021年3月に3億円余りで落札されたのは記憶に新しいところ。また、ゲーム会社やレコード会社、出版社を中心とするコンテンツ・ビジネスの世界でも各社各様のアプローチでNFT活用が本格化し始めた。日本ブロックチェーン協会をはじめとする3団体は8月、NFTの周知活動の一環として、キングコングの西野亮廣氏とgumi ファウンダーの國光宏尚氏による勉強会を開催。NFTの基本からNFTビジネスの現状、さらにNFTビジネスの将来像まで幅広く意見が交わされた。
NFTと仮想通貨の違いは“代替性”の有無
「NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)は暗号資産と同じブロックチェーン上の資産(トークン)のことです」
gumi ファウンダーの國光宏尚氏はNFTへの理解が低くとどまることを踏まえ、冒頭でこうかみ砕いで説明する。
暗号資産との違いはその名の通り、代替性の有無だ。代替性の説明でよく例に挙げられるのが、ゾロ目の記番号が付いたプレミアム紙幣だ。これをデジタルデータに置き換えると、記番号を無視すれば他の1万円分のデータと交換しても所有者にとって何ら問題は生じない。これが代替性のある状態だ。対してゾロ目を価値として捉えると、唯一無二のデータとして同様の交換は行えず、代替性がない状態となる。
前者が暗号資産、後者がNFTにあたり、NFTでは唯一無二のデータであることの証明として、データの発行数や記番号などのメタデータをブロックチェーン上で管理する。
スマートコントラクトが秘める可能性
NFTが注目を集める理由の1つが、この非代替性により、正規データの証明や供給量の制限が可能になることで価値をそれだけ担保しやすくなったことにある。「ネットの普及に伴うタダ同然のデータ複製によりデジタル資産の価値が一気に失われ、以来、コンテンツ業界は利幅の薄いサービスへの転換が強いられてきました」と國光氏は振り返るが、状況を打開する技術として関連企業が注視するのは無理からぬことだ。
ただし、「より大きなインパクトをもたらす」(國光氏)と目されているのが、ブロックチェーンでの取引(契約)を自動実行する仕組みでありプログラムでもある「スマートコントラクト」だ。「ポイントはスマートコントラクトに契約内容を記述することで、暗号資産では不可能な収益モデルの構築が可能になることです」と國光氏は強調する。
「世間では『転売ヤー』が嫌われています。理由は明白で、他人に迷惑を顧みず自分だけ儲けていることにあるのですが、スマートコントラクトを使えば作品の売買の都度、作家や販売元に収益が入る契約形態も採れるようになります。そうなれば、作り手にも利益を還元でき、供給側もどんどん転売してくれと応援しますよね(笑)」(國光氏)
ブロックチェーンの「ナチュラル・ボーン・グローバル」(國光氏)の特質による、グローバルビジネスでの高い利便性も見逃せないという。
「西野さんは自身の『えんとつ町のプペル』の海外配給に取り組んでいます。ただ、海外での契約は交渉やその語の契約金の回収など、いろいろと大変です。しかし、NFTではスマートコントラクトに契約内容を盛り込めるだけでなく、ブロックチェーン上での売買後には自動処理によりお金も確実に回収できるのです」(國光氏)
そんなNFTは現在、非代替性をコレクターズアイテムの用途で生かすかたちで、活用の裾野を広げている。代表的な成功例が、NBAのスーパープレイの短尺動画を特典とすることで45億円を売り上げたNFTトレーディングカードゲーム「NBA Top Shot」だ。また、人気メタルバンドのBABYMETALの結成10周年を記念したNFTトレーディングカードも、販売開始数分で10万ドル分を完売。一方、アートの世界では21年3月、Beeple氏のコラージュ作品がクリスティーズのオークションで6900万ドルという高値で落札されている。
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