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アップルが年利4.15%の普通預金口座サービスを提供したことが話題になっている。たとえば、三菱UFJ銀行が提示している普通預金口座の本稿執筆時点の利息は年0.001%となっている。また、米国で最大手に属する金融機関の提示する年利は0.01%だったりと、それらに比べても非常に魅力的な水準であることがわかる。アップルの新サービスが登場した背景と、現在米国の金融業界を取り巻く現状についてまとめたい。
Apple Cardに付随する預金口座サービス
日本の金融機関はもちろん、米国で最大手に属する金融機関が示す年利も0.01%程度である現在、「年利4.15%」を提示したアップルの普通預金口座サービスが話題で、すでに10億ドル(約1360億円)を集めたという報道もある。
アップルの普通預金口座サービスを分析する前に、同社のこれまでの金融サービスを振り返る。2019年3月に発表され、一部限定のベータテストを経て同年夏に一般提供が開始されたAppleのクレジットカードサービス「Apple Card」だが、これと対となるサービスとして2022年10月に提供が開始されたのが「普通預金口座(Saving Account)」だ。
iPhoneを所持するユーザーであれば端末を通じてApple Cardの申し込みが可能で、このApple Cardを持つユーザーであればSaving Accountも持てるという流れだ。
Apple Cardでは日常の買い物、あるいは特定の提携小売店経由での支払いを同カードで行うと、1~3%の還元を受けられる「Daily Cash」という仕組みが存在する。
利用金額が確定した段階で自身のアカウントへの還元が逐次行われるのだが、従来までこの受け取り先は「Apple Cash(旧名:Apple Pay Cash)」というモバイルウォレット上のアカウントとなっていた。
Apple Cashの残高はそのまま支払いにも使えるほか、紐付けた銀行口座に出金することも可能だが、いわゆる預金口座ではないため「利息がつかない」という問題があった。Daily Cashの還元先としてSaving Accountが存在すれば、こちらでは利息がつくため、「使って貯める」という流れを作りやすいメリットがある。
日本とは異なる米国人向け銀行サービス
日本とは異なる米国の個人向け銀行サービス(Retail Bank)の事情を少し説明すると、米国では銀行口座を開設する際に「Saving Account」「Checking Account」の2つの口座が用意される。Checking Accountは、いわゆる「当座口座」と呼ばれるもので、小切手やデビットカードなど各種の支払いはこのアカウントから行われることになる。
一方でChecking Accountでは利息がつかないため、あくまで「支払い専用口座」という扱いになる。そのため、普段は利息のつくSaving Accountで貯蓄を運用し、必要に応じてChecking Accountに残高を移し替えて支払いに充てるという使い方になる。
なお、Checking Accountの残高を上回る支払い請求があった場合、引き落としができない、あるいは「マイナス残高」の扱いとなり、後者の場合にペナルティとして不足分以上の金額が請求されるケースがある。
もし預金口座での利息を必要としないのであれば、「Apple Cashだけでも充分じゃないか」という声もあるかもしれない。ただし、Apple Cashには金額上の制限がいくつか設定されており、本人確認後の残高上限が「2万ドル(本稿執筆時の為替レートで約268万円)」、Apple Cash Familyの場合は「4,000ドル(約53万6,000円)」となっている。
日本で「○○Pay」の名称で呼ばれる資金移動業の決済サービスの金額上限が「100万円」に設定されていることを考えれば、あくまで支払いや簡易的な金銭授受のためのサービスだということがわかる。
先般、米シリコンバレー銀行(SVB)が
破綻して 預金保護が争点の1つになったが、米国における預金保護金額の上限は「25万ドル(約3,350万円)」となっており、Apple CashとSaving Accountとの性格の差異はこのあたりからもうかがえる。
【次ページ】「年利」だけではない、Apple預金口座サービスが「圧倒的」な点
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