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- 2022/01/24 掲載
4月からの「年金大改正」で何が変わる? 実は最も注目すべき「在職定時改定」とは何か
働くシニアを後押しする内容が盛りだくさん
2022年度(令和4年度)に行われる年金改正は、2020年5月に成立した改正法が施行されるものだ。法案の成立から約2年越しの施行となる。本連載では2020年6月にも今回の年金改正について解説している。
冒頭でも述べたとおり、今回の年金改正では受給開始年齢が引き上げられることはなく、改正で最も注目されているポイントは、シニアが働き続けることを推奨する部分だ。
前回、2020年6月に年金改正を解説した際、私はポイントを次の4つに絞った。
- 年金をもらう年齢を遅らせられる幅が75歳まで拡大する
- 働くシニアの年金減額基準が緩和
- パートなど短時間労働者への厚生年金適用拡大
- 個人型確定拠出年金(イデコ)に加入しやすくなる
この4つのポイントは、どれも働くシニアがより有利となる要素を持っている。
たとえば1は「繰り下げ受給」と呼ばれる仕組みだが、これまで70歳が上限だった年金のもらい始める年齢を、最大で75歳まで遅らせられるようになった。75歳まで遅らせれば、65歳でもらう場合と比べ、最大で84%も増額する。
当然、75歳まで年金をもらわないということは、預貯金があるか、資産運用収益があるなどの以外は働いて収入を得なければならず、長く働き続けるシニアを増やしたい意図が透けて見える。
2は、60~64歳のシニアが働きながら年金を受け取る際、これまで給料+老齢厚生年金の合計が月額28万円を超えると年金が減らされていたものが、合計が47万円までと緩和されるもので、やはり働くシニアを後押しする。
3は、60歳以上に限った話ではないが、60歳以降、パートやアルバイトが増える現状でも、より多くのシニアが70歳まで厚生年金に加入でき、もらえる年金を増やすことができるようになる施策だ。
4の個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)の話も、企業型確定拠出年金(企業型DC)との併用が可能になり、加入できる年齢の上限も60歳未満から65歳未満へと伸びる。企業型DCの加入上限も70歳未満に引き上げられる。
このように、どの改正内容も「長く働き続けるシニアが有利になる」ものばかりだ。このシニアの働き方変革に徹底フォーカスしている点が「年金大改正」と呼ばれる所以である。
ちなみに今回の新制度のほとんどは、2022年4月~10月に施行される。パートなどへの厚生年金の適用拡大のみが段階的に行われ、今までは従業員501人以上の大企業のみパートなどの短時間労働者を厚生年金に加入させる義務を負っていたものが、2022年10月に従業員101人以上の企業に義務付けられ、その後、2024年10月から51人以上の企業にも義務付けられる。
たくさん稼げるようになる60代前半、実はあまり多くない?
この2022年(令和4年)の「年金大改正」だが、新たな制度の中で注目すべきポイントは何なのだろうか。メディアで注目を集めるのは、多くの場合「1.年金をもらう年齢を遅らせられる(繰り下げられる)幅が75歳まで拡大する」と「2.働くシニアの年金減額基準が緩和」だろう。
しかし、これらの改正内容は、実はそれほど重要でないかもしれない。
まず、2の60歳~64歳まで働きながらもらう年金が、収入が一定額以上になると減額される制度は、経過措置に過ぎない。
そもそも年金の受給開始年齢が段階的に65歳へと引き上げられる過程で、60歳~64歳で雇用が維持されつつ、年金ももらっている人がいる状況だったためにあった制度である。全員が65歳からの受給になれば、繰り上げ受給を申請した人以外に60歳~64歳で年金をもらう人はいなくなる。
ちなみに男性で新たに60歳を迎える人については、すでに65歳からしか年金を受け取れなくなっている。
【次ページ】受給年齢を遅らせても、それほどもらえる額は増えない?
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