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- 2020/10/26 掲載
SBIやマネックス、三菱UFJ信託らが激論、STOが日本で「花開く」条件とは
証券各社のSTOへの取り組み状況とは
日本経済新聞の滝田氏は、まずSTO(セキュリティトークンの新規発行による資金調達)について、滝田氏は「セキュリティートークンを使ったオファリング、つまり“起債”について、「セキュリティトークン」でどのように使い勝手がよくなるのか?という点についてパネリストに質問を投げかけた。これに対し、三菱UFJ信託銀行の田中氏は、三菱UFJ信託がブロックチェーンを活用したデジタル証券のプラットフォームである「Progmat(プログマ)」に取り組んだ理由を図で説明した。
図の左側には、資金調達を手軽にしたい人、あるいはそれを通じて新しいファンを開拓したい企業がいて、右側にはこれまで投資の経験がない人、新しく投資を初めてみたい人がいる。その両者の間を取り持ちたいという思いから始まっているという。
三菱UFJ信託は管理型の信託銀行を子会社に持っているが、新しい有価証券が出ると否が応でも対応せざるを得ない。そこで、プログマの発想が出た段階で腹を決め、長期戦になるという認識をベースに図の中央を取り持つ役回りを目指してスタートしたという。
「プログマは『広くあまねく』をコンセプトにしていますが、特に着目しているのは不動産で、投資家層を開拓するための作り込みをしています」(田中氏)
田中氏は、昨今はREIT(不動産投資信託)の価格変動性が高い「ボラタイル」な動きが出ている点に言及し、「トークンの活用で手触り感のある不動産を個人投資家にWeb経由で届けることができるかも知れない」とした。
藤本氏は「流通市場(セカンダリー)の立場」にあり、同氏が取締役を務めるSBIはブロックチェーンに関する取り組みを4年ほど前から実施している。藤本氏は2016年にブロックチェーン推進の代表になり、2017年の資金決済法の改正で暗号資産の交換業のところから、ICO(Initial Coin offering:仮想通貨の新規発行による資金調達)を日本でどう実現するかにも取り組んでいる。
この際、ICOの会社としてSBIキャピタルベースを設立し、スタートアップ向けのエクイティファイナンス(株式発行による資金調達)の代替としての市場を目指したものの、なかなか承認が降りなかったたという。このため、エクイティクラウドという株式型クラウドファンディングの会社に衣替えしたという経緯を明かした。
2019年に金商法と資金決済法が同時に改正され、新たな「セキュリティトークン」が生まれた。藤本氏は「STOは法律上の立てつけが難しく、事業者を取りまとるために業界団体であるSTO協会を立ち上げた」とした。日本では法的な措置が整備されていない「セキュリティトークンの2次流通を可能にするプラットフォーム作り」を検討しているという。
BOOSTRY で「資金調達の民主化」に挑む佐々木氏は、ブロックチェーンやセキュリティトークンに関連する基盤である「ibet(アイベット)」の開発に取り組んでいる。プロダクトはOSSで、オープンソースにすることを前提としているという。
「ibetは共有基盤としており、野村グループ単独で運営するのではなく、業界標準としてみんなで運営できるものを目指しています」と佐々木氏。ibetの共同という領域に、ブロックチェーンらしさを生かす狙いがあるといい、実際の案件として、NRIの「デジタル・アセット債」を紹介した。
デジタル・アセット債はセキュリティトークンの1つで、社債として流通している。ユニークな点は、リターンが「カフェポイント」という、従来にない有価証券の仕組みである点だ。金利の代わりにカフェで使えるポイントが付くというもので、ブロックチェーンのトークンとして取り扱っている。
また、「農業プロジェクトの会員権」とあるが、「これはユーティリティートークンと呼ばれるもので、農業プロジェクトの資金調達に使いますが、有価証券ではないというもの。そういったことも可能です」とした。
完全に新しい商品が出るというよりは、「分けると昔からあった」ものをブロックチェーンの長所を生かすことで従来のものを活用しつつ、より取り扱いやすいサービスとして実現することを目指しているという。
なぜ日米でSTOの取り組み状況に差が生まれるのか
議論が進んでいく中、マネックスの松本氏は日米のレギュレーションの違いに言及した。「米国はどんどん進んでゆき、日本はどんどん遅れているというのが短絡的な感想です。米国はブロックチェーンやセキュリティトークンについて、必ずしも一番早かったわけではありません。最初は日本の方が早いくらいだったのです。しかし、米国は社会の枠組みとして、イノベーションを利用する方向にどんどん進んでいるため、レギュレーションも変化しています」(松本氏)
一方、日本は「後ろに戻ってしまった」という。証券業協会が「STOはやらない」と宣言したためだ。
松本氏は「STOは本来、金商法では把握し切れないものを流通させる可能性があったが、日本は金商法で定義できるものを対象にすることになり、過去に戻ってしまった」と語る。
米国は、新たな価値を流通あるいは売買しようとしているプレイヤーがいるため、「実現の方向で事故が起きないよう」にどのように開示をさせたらいいか議論する。日本は、そもそも流通させていいものかどうかを議論してしまう。両者は「方向性がまったく違う」とした。
【次ページ】STOにより投資市場を活発化させるためには
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