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- 2023/11/16 掲載
米大統領選はトランプの悪夢の再来か?カギ握る共和党内派閥・有権者層を徹底解説
米国史上初の下院議長の解任、共和党内の混乱で生じる地殻変動
2023年10月3日に強硬右派の反発を受け、ケビン・マッカーシー下院議長が解任された。その後、25日に強硬右派のマイク・ジョンソン議員が新下院議長に決定。彼は、トランプが主張する「2020年大統領選挙は不正だった」説の旗振り役で、MAGA(Make America Great Again:米国を再び偉大に、トランプ政治のコンセプト)と呼ばれるトランプ支持者の代表格でもある。党主流派のマッカーシー前議長が解任されて3週間、民主党と僅差の下院議席数しかない共和党は、過半数支持が必要な議長選の候補を絞り込めない。党内で、主流派と強硬右派が綱引きあったからだ。ジョンソンは議員歴6年と経験が浅く、幸いにも共和党内の“宿敵”が少なかった上、2年ごとに全員改選する下院議員は誰もが、議会機能停止が長引き、選挙に影響するのを懸念したのだ。
しかしこれは、単なる党内派閥抗争の話ではない。トランプMAGA派を含む右派と、中道穏健を含む主流派のどちらが共和党ないし“保守”を代表するのか、また有権者の3割を占める共和党支持層にどんな地殻変動が生じているかという、歴史規模の話である。
「レーガン保守」の揺らぎ、共和党アイデンティティー喪失の危機
共和党アイデンティティーの危機には、2つの側面がある。第1の側面は、共和党を結束させていた「レーガン保守」ブランドの揺らぎである。
リベラル側の民主党はもともと、多様な人種エスニシティや宗教、環境・人工妊娠中絶・銃保持・LGBT+Qなど広範囲の争点別活動団体を含むので、まとまりにくく分裂は日常茶飯事だ。しかもその内実は、エリートと上層マイノリティーが党を支配するという構造的な矛盾を抱える。
一方保守側の共和党は、少なくとも80年代から40年以上、「レーガン保守」ブランドという共通の旗の下で結束していた。ソ連崩壊と東西冷戦終了をもたらし、米国民主主義の勝利の象徴でもあるレーガン共和党大統領の保守主義が、共和党の「主流派」の根幹にあった。保守の主流は、3つの要素を含む。
第1は、「小さな政府」(政府支出や介入など役割は小さい方がいい)と財政規律を重んじる「経済財政保守」、第2は国家防衛と軍事的優位を重視するタカ派の「防衛保守」、第3は、キリスト教の価値観を絶対視する「宗教右派」を含め、伝統的な社会道徳秩序を守りたい「社会保守」である。
この3つの保守主義に加えて、銃保持などの「自衛権」や「言論の自由」といった建国以来の米国憲法の原則、特に政府介入を避け「個人の自由」を優先するという共通の価値観をもつ。白人層(注)が多くを占め、近年では「大都市」は民主支持が多く、「地方」には共和支持が多いという傾向が定着する。
この共和党保守本流の誇り高きアイデンティティーが揺らぐ契機は、まずジョージWブッシュ共和党政権の対外政策の失敗(対テロ・対イラク戦争の不調、財政破綻と米国の信用失墜)、次いで2008年選挙で穏健かつ主流派の共和党候補がオバマ民主党に大敗したことだった。そして2016年大統領選で、主流派を公然と批判するトランプ共和党政権が誕生する。 【次ページ】変わる共和党支持層の構成、5つの議員団と6グループの有権者層
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