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- 2024/07/10 掲載
テレビ討論会後に露呈した民主党の「問題」、バイデン撤退は「ない」ワケとは
ディベートは選挙戦略の正念場
選挙情報源がテレビだけでなく多様化する今でも、テレビ討論は多くの視聴者を惹きつける(表1)。従来は、多くの人が選挙に注目し始める11月投票日前2カ月間に複数回行われてきたが、今年はすでに両党候補が事実上決まり、投票総数の2~3割に上る不在者投票を9月に開始する州があるため、異例の6月開催となった。テレビ討論は、有権者を選挙に注目させ、支持候補が未定または支持が不安定な「説得可能」層を引き寄せるとともに、ケネディらの第1回討論(注1)を例として、支持基盤や政党、資金提供者を一致結束させる最大の好機だ。ゆえに両陣営の戦略の粋を集め、準備も怠りない。
陣営間と主催者、テレビ局の間で交渉を重ね、時期や回数、討論形式や司会者、参加者資格、議論内容、カメラの映し方まで取り決める。通常、優位に立つ現職は討論会に消極的だ。実際2024年共和党予備選挙で圧倒的優位に立つトランプは、党内予備選の討論会に1度も参加していない。バイデンも、激戦州でラテン系や若者など民主党支持基盤のバイデン離れという“危機”がひっ迫するまでは、討論を拒んでいた。
トランプVSバイデン交渉の2つの焦点
テレビ討論会での最も重要な交渉は、自分が有利になる形式やルールの採用に関する駆け引きである。1992年クリントン民主党候補とブッシュ共和党候補、第3党のペロー候補の第2回討論は、会場の一般有権者と候補が質疑応答する「市民集会」形式で行われた。有権者と感情をこめたやり取りが得意で、どんな質問にも豊富な政策知識で即答できるクリントンの提案だった。「財政赤字が個人的にどう影響したか」という質問に対し、クリントンは共感をこめたしぐさと声音で州知事時代の身近な経験を語った。一方副大統領ブッシュは言葉に詰まり、スーパーマーケットで自ら支払いした経験もないことが判明。庶民の窮状を実感しない候補として、景気が争点の選挙で致命傷を負った。
今回、トランプとバイデンの交渉の焦点は2つあった。1つは、両陣営が票を奪われたくない第3の候補ロバート・ケネディJRを排除する参加基準(世論調査と資金量)で合意した。2つ目は、「史上最悪の泥仕合」と酷評された2020年討論を教訓に、「話すべき人以外は、マイクを切る」と「無観客」のルールを決め、発言の妨害や割り込み、双方の同時発言による議論の混乱を避けた。
両陣営は、それぞれの戦略目標に従い、討論で「何をすべきか・すべきでないか(To-Do & Not-To-Do」をリスト化し、問答台本を片手に、テスト済みの効果的フレーズや禁句、声音や立ち居振る舞い、目線まで練習を積んだ。では、今回その成果はどうだったか。
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