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- 2025/03/04 掲載
「トランプ再選」で世界はどう動く?1カ月で見えた「2つの脆弱性」

第二次政権の3つの特徴、トランプ革命に懐疑的な世論
この1カ月の動向には、大きく3つの特徴がある。第1に、第一次政権と二次の最大の違いは、報復色の強さである。「大統領令一覧」(表2)で示す通り、まず就任直後に着手したのは、バイデン政権の政策を変更、政府を政争の「武器」として濫用した民主党の政策と官僚システムおよび人事を覆し、各種規制や文化的規準を撤廃したことだ。一方大統領は、彼に忠誠的な2021年1月6日連邦議事堂襲撃事件の有罪被告のほとんどに恩赦を与え、無罪放免とした。就任後最初の週に敵とみなした人々に復讐(ふくしゅう)するという約束は空虚な選挙公約ではなく、その報復は過去に対する罰を与え、さらに将来自分に逆らう可能性のある者を威嚇するために、“非忠誠者/機関リスト”は拡大中だという。
第2に、トランプMAGA(Make America Great Again)コンセプトの中核である「アメリカ第一主義」が、移民政策や経済通商、国際関係など広く、かつ鮮明に主張される。支持基盤と世論一般の最大懸案事項である移民、そして経済安全保障はその要だ。露骨な国益損得勘定、われ知らずの孤立主義、当事者間「取引」の力業で物事を進めるやり方は、二次でも健在だ。
しかし就任1カ月の支持率調査(表3)を見るかぎり、「報復」も「アメリカ第一主義」政策も、政権が期待するほど支持されていない。過半数が支持するのは「移民」だけで、ほかの大統領令も共和党支持者とそれ以外とでは、評価が二分する。特に「連邦職員の解雇」や「対外人道援助の停止」は、無党派層に不人気だ。

表中に示していないが、トランプの政策的要請に従わない制裁としての「関税」は、対メキシコおよびカナダともに世論の6割が反対する。対中10%追加関税は例外で、賛成5割(反対45%)だ。人々は、生活と職の防衛を懸念する。これら三国への関税引き上げが「インフレ」につながると、7割が考えている。また労働者にとっても製造業にとっても、これらの措置が利益になると思う人は3割にとどまり、むしろ不利益になるととらえる人が4割から5割近くいる。
第3の特徴は、トランプが大統領権限を超えることへの懸念である。
本人は就任式でも「王室」風を意識し(写真1)、三権分立を超えて「大統領は何でもできる」権限に強い関心をもつ。SNSでも「国を救う者は法に拘束されない」と、帝王気取りだ(写真2)。
SNSでも「国を救う者は法に拘束されない」と、帝王気取りだ(写真2)。しかし実際には、大統領令の「連邦職員解雇」や対外援助機関活動停止、「出生地主義」否定は、連邦法や憲法に違反する可能性が高く、訴訟が起きている。上記ポスト紙調査でも、「大統領は権限を逸脱している」は6割、「裁判所がノーと言ったら大統領は従うべき」は8割に上る。
世論支持も微妙だが、加えてトランプ政権内部でも異なる3つの力学がせめぎあう。次ページで3つの力学について解説する。 【次ページ】力学1:保守派による「プロジェクト2025」とキープレーヤー
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