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  • 2024/09/04 掲載

【図解】米大統領選、ハリス対トランプの「対立点」11項目をわかりやすく解説

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7月21日にバイデン大統領が選挙戦を撤退、新たな局面を迎えた米国大統領選挙。1カ月後の8月19日~22日に開催された民主党大会で、副大統領カマラ・ハリス、ミネソタ州知事ティム・ウォルズが、正式に正副大統領候補として指名された。バイデンより20歳若い、初の黒人女性大統領候補の誕生に民主党支持層は活気づき、選挙結果を左右する7つの激戦州の世論調査では、トランプ共和党候補を追い抜く勢いだ。ようやく民主・共和の両党候補と政策綱領が決まり、9月から直接対決の本選挙が始まる。ハリスとトランプの政策、政権の目指す方向はどう違うのか。両者の違いを読み解くポイントを解説する。
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表:ハリス対トランプの政策比較
(出典:筆者作成)

経済ファーストの24年大統領選、トランプならインフレ悪化?

 民主党と共和党の政策は、「大きな政府」対「小さな政府」と対比されることが多い。自由や公平などの社会的正義を実現するために、連邦政府が大きな役割を担う民主党と、個人や民間、市場の自由を重んじ連邦政府の介入を限定する共和党の違いだ。ただしこの対比は原則論であって、実際には、連邦政府の財政状況や政権、政策領域ごとに濃淡が変わる(表)。

 第1に、最も重要なのは経済政策だ。統計数字では、景気雇用は上向き、インフレも沈静化の兆しがあるが、庶民の実感が追いつかない。8月上旬のワシントンポスト/ABC/Ipsos調査によると、景気や雇用などの経済一般と、家計に直結する物価インフレ対策は、それぞれ全米の約半数が「最も重要なものの1つ」に挙げている。第2位(40%)の「民主主義を守る」は民主党支持層に多く、第3位「メキシコ国境管理と移民」(36%)は共和党支持層が多いのに対し、経済インフレは党派を超えている。

 バイデンは、庶民の苦境に今ひとつ共感が足りず不人気だった。教訓を学んだハリス、そして白人労働者層を支持基盤とするトランプも、経済政策ではポピュリズム寄りである。程度の差はあれ、中間所得層減税、国内雇用促進、物価抑制策、社会保障や医療サービスの拡大または一定の維持を公約する。

 しかし物価インフレ対策は、「働く中間層の家族」の支援を強調するハリスのほうが、具体的かつ強気だ。生活必需品特に食品価格をつりあげる企業への罰則、主要な薬価の切り下げなど、厳しい連邦規制を提唱する。多くの世論調査では、景気や雇用、株価維持など経済政策全般では、ハリスよりトランプのほうが信頼されているという結果が示されているが、物価対策ではハリスのほうが信頼度が高いという激戦州調査の結果もある。

 トランプはむしろインフレを悪化させるという見方さえある。メキシコ国境からの移民流入の取り締まり強化、不法移民の強制送還などの移民政策は国内労働力の不足につながり、人件費高騰が物価に転嫁される。また2017年トランプ政権下の富裕層・企業向け大減税、いわゆる「トランプ減税」の恒久化で投資や消費が増えれば、景気好調がインフレを刺激する。さらに国内産業保護の観点から、外国からの輸入品一律関税10~20%、中国は60%を課すとなれば、生活必需品を含めて輸入価格高騰につながることは必須だ。

両者の大きな違いは、誰が得をして、誰が損するか

 第2に、両者の政策は、どこから金を取るか(財源・税制)、どこに誰のために重点的に使うか(政策目的・産業支援)という、富の「再分配」のやり方が大きく違う。トランプ時代に比べてバイデン政権下で政府財政は急激に悪化している。しかし、どちらも中間所得層の増税はできない。財政をひっ迫させる社会保障や公的医療保険のさらなる拡充を見込むハリス民主党は、中間層減税は維持しつつ、「トランプ減税」の目玉だった法人税を大幅に引き上げる。

 一方トランプ共和党は、減税を維持しつつ支出の削減を狙う。対外支援費は削減、移民への社会保障は最小化、バイデン政策の柱だった気候変動対策や再生可能エネルギー産業の補助金は削減・廃止する構えだ。産業支援と雇用確保では、バイデン以上に「グリーン」なハリスと対照的に、トランプは石油や天然ガスの生産を奨励し、原子力開発を含めたエネルギー産業への政府規制を大幅緩和する。それは米国単独でも持続可能な「エネルギー自立」の観点からも重要だ。

 第3に、有権者全体では優先度が低くても、基盤支持層や激戦州で特に重視される“強い”争点については、政策立場が明確に分かれる。

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富の再分配方法や財源の取り方、支出の優先順位が大きく異なり、特に中間所得層の増税や産業支援、エネルギー政策などで明確な対立が見られる
(Photo/Shutterstock.com)
【次ページ】日本にとって“死活問題”の「外交」はどうなる?

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