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このところビットコイン価格が顕著に上昇している。ハイテク業界との関係が深い米シリコンバレー銀行(SVB)や米シグネチャー銀行の破綻や、大手仮想通貨事業者に対する米国政府の提訴など、仮想通貨業界には逆風が吹いている。それにも関わらず、なぜビットコイン価格は上昇しているのだろうか。
ビットコインには逆風ばかり
ビットコイン価格は、2021年11月に770万円台の高値を付けて以降、暴落とも言える状況になっている。22年の年末には150万円台となり、高値の5分の1まで下落した。ところが年明け以降、価格が急激に回復しており、現時点では370万円前後で推移している。
だが、仮想通貨をめぐる環境は悪化する一方である。
各国の規制当局が仮想通貨の取引に対して厳しい目を向けており、多くの個人投資家が市場から退出した。規制内容は国によって異なるが、取引そのものが制限されたり、クレジットカードからの仮想通貨への換金、あるいは仮想通貨からリアル通貨への両替などに規制が加えられるなど、売買を続けてはいるものの、仮想通貨内での取引に限定せざるを得ない投資家も多い。
22年の11月には取引所運営で第2位だった米FTXトレーディングが破産し、市場は大混乱となった。さらに米国の米商品先物取引委員会(CFTC)は、取引所最大手のバイナンスを提訴する事態となっている。仮想通貨には逆風ばかりが吹いている状況であり、最高値から暴落と言えるほどの下落に見舞われているのも当然といえば当然の結果だろう。
こうした状況に加えて、ダメ押しになると思われたのが米シリコンバレー銀行と米シグネチャー銀行の破綻である。
両行は、仮想通貨事業者を含むハイテク業界に強く、預金を預ける顧客の多くがベンチャー企業であった。一方、集めた預金の運用先はMBS(不動産担保証券)や長期国債など、利回りが高く年限が長い商品に偏っており、流動性が乏しかった。
通常の銀行であれば、個人顧客からも大量に預金を集めるため、一度、獲得した預金が一気に流出するというのは考えにくい。だが、両行は動きの早いハイテク企業からの預金が中心となっており、想定外のペースで預金が流出し、一気に破綻してしまった。
矛盾した動きの背景にあるのはインフレ懸念
ハイテク業界に強みを持つ両行が破綻したということになれば、当然のことながらビットコイン価格は、悪影響を受けて下落しそうに思える。実際、両行の破綻直後は、ビットコイン価格は大きく値を下げたものの、すぐに元の価格に戻し、そこから、さらに上値を追う展開となっている。
こうした、ある種、矛盾した値動きの背景となっているのは、ドルを中心とするリアルな通貨の価値毀損リスク(つまりインフレリスク)に他ならない。
米国の中央銀行に相当するFRB(連邦準備制度理事会)は、大規模緩和策から脱却するため、金利の引き上げなど引き締め政策に転じており、日本を除く各国の金利は急上昇している。
預金者にとって現金のまま銀行に預けておくことは相対的に不利であり、ほかの資産に乗り換える動きが拡大。両行から大量の預金が引き出される事態となった。一連の銀行破綻は、各行個別の問題とはいえ、大規模緩和策からの脱却という金融政策の結果として生じたものであり、金融市場全体とリンクしているのだ。
クレディスイスの経営不安も同じメカニズムである。同行が無理な経営を行っていたことは金融業界では周知の事実だったが、市場はあくまでも様子見のスタンスだった。ところが、急激な金利の上昇によって債券価格が大きく下落し、同行の資産内容に対する懸念が高まり、株価が急落する事態を招いた。
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