- 2025/02/05 掲載
トランプ大統領による暗号通貨規制「大転換」、新法で変わる5つのポイント
トランプ新政権、テクノロジー関連人事から見る暗号通貨への影響
トランプ新政権とシリコンバレーが急速に距離を縮めているが、中でも暗号資産業界の成長を促す動きが加速している。1月23日の大統領就任直後、「デジタル金融テクノロジーにおける米国のリーダーシップの強化」と題した大統領令にさっそく書名、「デジタル資産市場に関する大統領作業部会」を設立して、デジタル資産に関する規制の確立を目指す。
同部会のトップに立つのが、デービット・サックス氏だ。PayPal創業期の幹部メンバーとして知られるサックス氏は、新設される「ホワイトハウスAI・暗号通貨担当特使」のポストにも就任した。同氏には「両分野で米国を明確な世界のリーダーとする」というミッションが課せられる。
加えて注目されるのが、暗号通貨業界に理解を示すポール・アトキンス氏のSEC(証券取引委員会)委員長就任だ。アトキンス氏は暗号通貨の支持者であり、業界のアドバイザーとしても活動してきた経歴を持つ。
体制面では、バイオテック起業家として知られるビベック・ラマスワミー氏と、テスラのイーロン・マスク氏が、DOGE(Department of Government Efficiency:政府効率化省)という諮問機関を立ち上げた。
トランプ氏自身、そもそも暗号通貨への積極的な姿勢を鮮明にしている。ビットコイン価格が史上最高値となる10万ドルを記録した際、自身が手がけるSNSのTruth Socialに「ビットコイナーの皆さん、おめでとう!10万ドルだ!私からの贈り物だ!」と投稿。大統領就任直後にビットコイン価格が15万ドルに達することを期待するという発言もあったと報じられており、今後の暗号通貨市場における期待値はさらに大きくなっている状況だ。
政治献金の面でも暗号通貨業界の影響力は無視できない。業界からの献金は、今回の選挙におけるスーパーPAC(独立系政治献金団体)への企業献金全体のなんと3分の1を占めた。下院選挙では、業界が支援した共和党29人、民主党33人のうち、85%が当選を果たしている。
トランプ氏の再選、上下両院の多数派獲得による法規制整備の加速
共和党が上下両院で多数派を確保したことで、暗号通貨関連の法規制整備が加速する公算が大きくなっている。Coinbaseのチーフポリシーオフィサーを務めるファリヤール・シルザド氏はCNBCに対し、「史上最も暗号通貨に前向きな議会であり、非常に暗号通貨に前向きな大統領が就任する」と指摘。この体制により、「暗号通貨を保有する5000万人の米国人の声が、政策に反映される」と期待を寄せる。暗号通貨業界は、今回の選挙に向けて強力なロビー活動を展開してきた。連邦選挙委員会のデータによると、業界関連の政治活動委員会(PAC)およびその他の団体は2億4,500万ドルを超える資金を集めたという。Coinbaseが支援するStand With Crypto Allianceは、下院・上院候補者の暗号通貨に対する姿勢を評価するグレーディングシステムを開発。同団体によると、約300人の暗号通貨支持派の議員が議席を獲得する見込みだ。
シルザド氏は、「2025年には市場構造に関する法案とステーブルコインに関する法案の両方について、大きな進展と可決が期待できる」との見解を示す。
証券取引委員会(SEC)委員長の人事も暗号通貨業界にとって追い風となる見通しだ。前職のゲイリー・ゲンスラー氏は在任中、暗号通貨に対して厳格な監督姿勢を取り続けてきた。ポール・アトキンス氏が後任に就くことで、暗号通貨業界に対するSECの姿勢は一変することが見込まれている。
この状況下、議会では2つの重要な暗号通貨関連法案の審議が進められている。一つは、共和党が提出したデジタル資産の法的枠組みを確立する「Financial Innovation and Technology for the 21st Century Act」。もう一つは、ステーブルコイン発行者に対する規制体制の確立を目指す「Clarity for Payment Stablecoins Act」だ。すでに前者は下院を通過しており、シルザド氏が指摘するように、2025年には大きな進展が期待される。 【次ページ】注目される法案その1「21世紀金融イノベーション・テクノロジー法」
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