- 2025/02/05 掲載
トランプ大統領による暗号通貨規制「大転換」、新法で変わる5つのポイント(2/2)
注目される法案その1「21世紀金融イノベーション・テクノロジー法」
デジタル資産の法的枠組みを確立する「Financial Innovation and Technology for the 21st Century Act(21世紀金融イノベーション・テクノロジー法)」は、すでに下院を通過しており、2025年の可決が期待されている重要法案だ。この法案は、暗号通貨をデジタルコモディティとして定義し、規制の明確化を図る内容となっている。ポイントは、以下のように、暗号資産に関する4つの重要な定義を明確化したことだ。
銀行などの仲介者を介さずに、個人間で直接やり取りできるデジタル上の価値(主にビットコインなどの暗号資産を指す)のこと。ただし、従来の金融商品(株式や債券など)は含まれない。
②「デジタルコモディティ」とは:
一般の利用者が保有する暗号資産のうち、マイニングなどの報酬として獲得したもの、または正規の取引所で購入したものを指す。つまり、発行者や関係者が保有するものは除外される。
③「デジタルアセット発行者」とは:
対価を受け取って暗号資産を発行する事業者のこと。ただし、マイニング報酬のような形で暗号資産を配布するためだけにプログラムを作成する開発者は含まれない。
④「エンドユーザー配布」とは:
マイニングやステーキングなどの形で、システム参加者に平等に配布される仕組みのこと。現金との交換ではなく、システムへの貢献に対する報酬として配布される形態を指す。
新たな規制体制の下では、CFTC(商品先物取引委員会)とSECが共同でルール作りを行う。両委員会は、デジタルアセット関連の定義を具体化するための規則を共同で制定するほか、両委員会に二重登録している事業者に対する重複規制や矛盾する規制、過度な負担を軽減するための免除規定も設ける。
また、自己管理(セルフカストディ)の保護も明記。金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)は、個人がハードウェアウォレットやソフトウェアウォレットなどを通じてデジタルアセットを自己管理することや、合法的な目的でデジタルアセットの取引を行うことを禁止する規則や命令を出すことはできない。
これらの定義や新規則により、誰が規制の対象となり、どのような取引が規制されるのかが明確になる。これらは暗号通貨市場が健全な発展を遂げるための重要な基礎になる。
注目される法案その2、「2023年ステーブルコイン規制明確化法」
なお、ステーブルコイン発行者に対する規制体制の確立を目指す「Clarity for Payment Stablecoins Act of 2023(2023年ステーブルコイン規制明確化法)」は、支払い手段としてのステーブルコインの健全な発展を促す内容となっている。以下が同法案の主なポイントとなる。
決済手段として使われる暗号資産で、1ドル=1コインのように価値が安定するよう設計されたもの。発行者は、この価値の安定性を維持する義務を負う。
②裏付け資産の義務付け:
発行者は発行額と同額以上の資産を保有する必要がある。たとえば、100万ドル分のステーブルコインを発行する場合、最低でも100万ドル分の適格資産(米ドル現金や短期国債など)を保有しなければならない。これは、利用者がいつでも現金化できることを保証するための措置となる。
③透明性の確保:
発行者は毎月、発行総額と保有資産の内容をウェブサイトで公開し、会計監査を受ける必要がある。経営陣が虚偽の報告をした場合は刑事罰の対象になる。
④監督体制:
- 発行者は連邦当局から認可を受ける必要がある。
- 当局は発行者の財務健全性を確保するための基準を設定する。
- 申請から120日以内に認可の可否を決定する必要がある。
⑤特別な規制:
自己担保型(発行者が作った別の暗号資産を担保とするタイプ)のステーブルコインについては、リスク評価のため2年間の発行停止期間が設けられる。
⑥法的位置づけ:
認可を受けたステーブルコインは「証券」としては扱われず、独自の規制カテゴリーとして扱われる。発行・取引に関する法的な不確実性を解消するのが目的だ。
これらの規制は、ステーブルコインの安全性と信頼性を高めるもので、決済手段として普及する可能性を拡大しうるものとなる。
トランプ氏の大統領就任によって、今後、暗号通貨市場はどのように変化するのか、引き続き注視していく必要がありそうだ。
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