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- 2024/08/02 掲載
セキュリティトークンとは何か? 最新カオスマップや市場規模、事例を徹底解説
セキュリティトークンとは何か
筆者が代表を務める日本セキュリティトークン協会では「セキュリティトークン(Security Token:ST)」を次のように定義している。セキュリティトークンとは、 ブロックチェーンネットワーク上で発行されるデジタルトークンのうち、有価証券その他の資産や価値の裏付けを有するものを指す。ブロックチェーンの特性を生かし、裏付資産に対する権利をボーダーレスかつセキュアに移転可能とする。日本法上では、 典型的には金融商品取引法上「電子記録移転有価証券表示権利等」と定義されるものを指すが、当協会では、同法の適用のない資産などに対する権利をトークン化したものおよび当該権利を表示するトークンをも広くセキュリティトークンの定義に含む
セキュリティトークンの語義は、証券を意味する「Securities」と、ブロックチェーン技術における「Token」を組み合わせた名称が示す通り、証券「的な」性質を持つトークンのことである。
国内では、金融商品取引法(以下、金商法)に服するデジタル証券と同義的に呼称されることも多いが、上記の通り金商法下に服さないものも含むことがある。最近のトレンドに沿うならば、現実世界に存在する資産をブロックチェーンネットワーク上にトークンとして表象する「RWA(Real World Asset)」と近い概念と言える。
この点において日本セキュリティトークン協会では、活動対象としてのセキュリティトークンを、裏付けとされている資産の種類に応じて、独自に3つに分類している。
Asset-backed ST:不動産・航空機・金銭債権などの資産を裏付けとする。
Tokenized Asset:資産性会員権・高級酒・美術芸術品など、資産性のある物品を裏付けとする。
これは、トークン化技術を用いて新しいビジネスを創り出す上では、適用される法規制を軸にするよりも、どのような資産や権利を裏付けにし、トークンで表現するのかを出発点とすべきという認識によるものだ。
ただし、セキュリティトークンの定義や分類にはさまざまな考え方があり、特に、グローバルではそれぞれの国地域によって異なることが多い点には注意が必要だ。
国内のセキュリティトークンビジネスのこれまでと現状
セキュリティトークンを活用した資金調達方法はSTO(Security Token Offering)と呼ばれる。似たような名称のものにICO(Initial Coin Offering)があるが、これは2017年前後の暗号資産(当時は仮想通貨と呼ばれた)バブルの一因となったもので、何ら価値の裏付けのないトークンが氾濫(はんらん)し多くの詐欺の温床となった。
STOはその反省もあって、価値の裏付けを持たせたり、法規制の網をかけたりしたもので、2018年後半から少しずつ米国を中心に不動産やファンド持分などを裏付けとした発行事例がみられるようになった。
国内においても、2019年からセキュリティトークンビジネスの拡大が始まっている。
米国のデジタル証券のプラットフォーマーセキュリタイズ (Securitize)が国内大手企業の出資を受けて日本参入を進める一方、国内勢からも、野村ホールディングスと野村総合研究所がセキュリティトークン基盤ibetを開発するBOOSTRYを立ち上げたり、三菱UFJ信託銀行が中心となって後のデジタルアセット共創コンソーシアムの前身となるST研究コンソーシアムを設立したりした。
本格的に商業ベースでのセキュリティトークン案件が出てきたのは2021年になる。4月にはSBI証券による本邦初の公募型社債セキュリティトークン(発行額1億円)、8月にはケネディクスにより渋谷神南の不動産を裏付けとした公募型不動産セキュリティトークン(発行額14億円)が発行された。
2022年に入ると、三井物産デジタル・アセットマネジメントによる草津温泉旅館案件(発行額20億円)が出てくるなど、対象資産の多様化が進んだ。2023年以降も堅調に案件数・案件規模ともに拡大を続け、ケネディクスによる月島タワーマンション案件では国内最大規模の134億円が発行されており、規模の点でも拡がりつつある状況である。
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