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  • 2024/03/19 掲載

製造業でも進む「生成AI活用」、先行する独ボッシュ「驚愕すぎる取り組み」とは

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マーケティングやコンサルティング業界が先行する生成AI活用だが、製造業でも大手企業による取り組みが本格化しつつある。42万人以上の従業員を持つドイツ・ボッシュは、生成AI活用で既存のAIプロジェクトの生産性を大幅に高める計画を明らかにし、いくつかの工場で実際にプロジェクトを始めている。生成AIを活用することで、通常半年から1年はかかるAI開発プロジェクトを数週間にまで短縮することを狙うという。具体的にどのように生成AIを活用しようとしているのか、ボッシュの取り組みを探ってみたい。
執筆:細谷 元
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ボッシュの工場では生成AIを積極的に活用している
(出典:ボッシュ

製造業における生成AIの経済効果

 マーケティングやコンサルティング業界で導入が広がる生成AIだが、製造企業の間でも活用を模索する動きが増えつつある。

 ABI Researchによると、製造産業では生成AI投資によってもたらされる追加収益は2026~29年にかけて44億ドル増加、また2032年には105億ドルに達する見込みだ。

 製造を含む全産業での生成AI活用は、同テクノロジーの成熟化に伴い3つの段階で広がると予想されるが、このうち製造企業の追加収益の成長が最大化するのは2~3段階目であるという。

 ABI Researchは、製造産業では主に、デザイン、エンジニアリング、プロダクション、オペレーションの4分野で生成AI活用が広がると予想。このうち、まずデザイン分野での生成AI活用が増える可能性があるという。一方、プロダクションとオペレーションは、その複雑さから、生成AIのさらなる成熟化が必須となり、デザイン分野に比べ導入までより多くの時間がかかると分析している。

 デザイン分野でのユースケースとしては、MBOM(Manufacturing Bill of Materials=製造用部品表)やEBOM(Electrical Bill of Materials=電気用部品表)の最適化などが挙げられる。

 MBOMとは、製品を製造するために必要なすべての物理的な部品、アセンブリ(組み立て部品)、その他の材料を記載した詳細なリスト。各部品の数量、仕様、サイズなどの情報が含まれており、製造プロセスの計画・管理には必須の存在だ。

 一方、EBOMは製品に必要な電気部品や電子部品の詳細を記載したリストで、回路基板、配線、コネクタ、スイッチ、センサーなど電気的な機能を果たすために必要なすべての部品情報が含まれる。

 生成AIを活用することで、たとえば、与えられた仕様や制約条件のもとで、新しい製品デザインや部品の配置案を自動的に生成したり、MBOMやEBOMを顧客特有の要求に基づいてカスタマイズすることが可能となり、生産性の向上が期待できる。

 このほか他業種とも共通するところだが、社内の営業・マーケティング部門での資料生成、カスタマーサポート向けのチャットボット、ソフトウェア開発部門でのコード生成機能などにより、生産性の改善が見込まれる。

画像
ボッシュの独ヒルデスハイム工場のAIによる取り組み
(出典:ボッシュ

ボッシュの生成AI活用の取り組み

 製造業において生成AIをどう活用するのかを考える際、やはり業界リーダーの動きは注目に値するところ。生成AIに関して先行した動きを見せているのがドイツのボッシュだ。

 2023年の売上高は916億ユーロ、従業員42万7000人を抱える同社。研究開発に多大な投資を行っており、2022年の研究開発費は72億ユーロに達した。研究開発部門の人員は9万100人に上り、自社でAI開発できる体制を有している。

 ボッシュは2023年12月、生成AIを活用して既存のAIアプリケーション開発を加速する計画を発表。これにより、通常半年から1年要するAIアプリケーション開発を数週間に短縮することを目指す。

 同社はここ数年、製造工程のスケージュール、モニタリング、管理を自動化する機械学習ベースのAIアプリケーションを開発し、世界各地の工場に導入してきた。

 たとえば、ドイツ・ヒルデスハイムの工場では、機械学習ベースのデータ分析アプリケーションが導入され、これにより新しい生産ラインの立ち上げ時におけるサイクルタイムを15%削減することに成功。また、シュトゥットガルト・フォイエルバッハ工場では、コンポーネントのテスト工程に要する時間を3分半から3分に短縮したという。

 ボッシュが発表した生成AIのユースケースの1つが、生成AIによって人工的な画像を作り出し、これらを既存の機械学習モデルに読み込ませることで、モデルの精度を高めるというもの。

 一般的にAIモデルの開発には、AIモデルが学習するための膨大なデータが必要となる。1990年代には、AI研究者らは、写真を1枚1枚撮影し、それをもとにデータセットを構築していたといわれる。2000年代に入ってインターネットから大量のデータを収集することが可能となったが、データ品質は低く、矛盾点も多かったことから、データのクリーニングには依然多くの人手とコストがかかっていた。

 製造業におけるAIモデル開発も例外ではなく、たとえば、不良品を検出するAIモデルを開発するには、さまざまなパターンの不良品画像をデータセットとして用意する必要があり、このデータ収集とクリーニングのプロセスに多くの時間がかかっているのが現状だ。

 生成AIの登場によって、この状況が大きく変わりつつある。実際の画像データではなく、生成AIによって人工的に画像を作り出し、それをデータセットとして活用することで、データ収集やクリーニングに要する時間を大幅に短縮することが可能になるからだ。 【次ページ】これまで不可能だった〇〇の自動化を生成AIで実現へ
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