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- 2024/02/16 掲載
マスク氏にバカにされたBYDが「テスラ超え」、それでもEV覇権がほど遠い「5つの弱点」
連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
米国が恐怖を感じる「BYDの価格力」
米国では、廉価モデルを引っ下げて世界各地で台頭するBYDが、「テスラキラー」EVメーカーの本命であると目されている。米国では日本のようにBYD車をショールームで眺めたり、触ったり、試乗することはできないが、「投資の神様」ことウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイがBYDに投資をしていることは米国でよく知られている。
BYDの四半期ごとのEV販売台数は過去3年間ほどでテスラに肉薄していたが、2023年10~12月期にBYDが52万6409台を販売し、ついにテスラの48万4507台に明確な差をつけて逆転した(冒頭の図1)。テスラは収益率の低下を覚悟した値下げで応戦しているが、BYDの勢いを止めることはできておらず、2024年には通年の販売台数でも抜かれると予測されている。
特に米自動車業界が脅威と見ているのが、BYD車の価格競争力だ。米フォーチュン誌は、「BYDのエントリーモデルであるシーガルは、EVバッテリー企業でもある同社が(EV製造で最も価格の高い)バッテリー価格をコントロールできるため、競合より40%も低い1万1,000ドル(約165万円)の戦略的値付けを実現している」と紹介。
さらにテスラが開発中の2万5,000ドル(約375万円)の「モデル2」をいまだリリースできていない中、自動車ローンの高金利や各国政府のEV購入補助金が打ち切られても、BYDの製品が欧州市場で強みを発揮していると、英調査企業Economist Intelligence Unitの自動車産業アナリスト、ニシータ・アガルワル氏の見解を報じた。
欧州は中国EVの成長で「1,155億円の損害」を被る
米国は現在、中国製の自動車に対してトランプ政権時代の2018年7月から27.5%の高関税をかけており、さすがのBYDもバスなどの商用車を除いて米市場に参入できていない。だが、価格競争力のある中国EVメーカーがさらに成長した2030年には、欧州自動車産業は年間77億ドル(約1.1兆円)相当の「損害」を被るとの独金融大手アリアンツの試算が米国でも報じられ、BYDとの対決にテスラなど米自動車業界は身構えている。
米経済専門局のCNBCも、「BYDなど中国EVメーカーが米国市場に直接参入していなくても、アジア・欧州など他の大陸で販売台数を顕著に伸ばしているため、大きな脅威だ」との見方を示している。
では、テスラを率いる総帥のイーロン・マスク氏は、BYDをどのように見ているのだろうか。
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