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鉄道網が張り巡らされ、タクシーやバスが走り回る日本は、移動手段に困らない社会に思える。しかし、「見落とされている“移動”の課題があります」と語るのが、電動マイクロモビリティのシェアリングサービスを展開するLuupの代表取締役社長兼CEO岡井大輝氏だ。日本の交通インフラが抱える課題とは何か、またそれを解決する手段として、なぜ同社はわざわざ電動キックボードや電動アシスト自転車を選んだのか。Luupの代表取締役社長兼CEO岡井大輝氏に話を聞いた。
日本は「駅近」だけに価値が集中
諸外国と比べたとき、日本の「ヒトの移動」を支えるインフラにはどのような特徴があるでしょうか。まず、都市部については世界的に見ても鉄道網が発達しており、駅を中心に街が発展してきた歴史があります。その結果、駅前に主要な不動産が集積する形となり、不動産価値も駅からの距離でほとんど決まるような状況です。
一方で、駅から離れた郊外や田舎のエリアに関しては、街のインフラ整備が追い付かない状況になっています。それは、郊外・田舎エリアの人口減少が進む中で、バスやタクシーだけでなく、水道・電気・ガスなど、街のインフラを運営するためのコストが採算に合わなくなってきているためです。
そうなれば、郊外・田舎エリアに住む人々は、利便性を求めさらに都市部に流入するようになります。もちろん、新型コロナウイルス感染症で一時的にその逆の動きも出てきましたが、現在は元に戻り、都市部への流入が増えています。
これは東京などの都市部に限った話ではなくて、たとえば富山県なら富山市など、都市部に人が集中する傾向があるのです。このように都市集中が加速する中、駅周辺エリアの土地や物件は収容キャパを超えており、人であふれかえる状況になっています。
そうなると、人々は地価や家賃の安い「駅と駅の中間」のエリアに住むようになっていきます。ただし、駅からの距離が遠くなるにつれて、当然ながら移動は不便になります。どこへ行くにも、歩くと意外と40~50分近くかかってしまうような距離です。この3~4km程度の距離の移動には、ちょうど良い公共交通手段もありません。とはいえ、ハードウェアが絡むような公共交通のアップデートは、瞬時には実現できません。つまり、日本はそうした「短距離の移動」に課題があると考えています。
なぜバス・タクシーは解決策にならないのか?
短距離の移動の課題に対する解決手段となり得る存在として、今もタクシーやバスなどがあります。
しかし、タクシーの場合は、人を1人運ぶにも常に運転手が1人必要になるため、運営コストを考慮すると、現在の水準以上は運賃が安くならないと考えています。タクシーの金額は、皆さんが毎日支払える金額ではありませんよね。その価格設定が日常生活の移動手段としてマスに浸透しきらない理由だと考えられます。
また、バスも同じであり、1台のバスを運営するためにシフト制を組み、ドライバー数名体制で運営するのが一般的です。この事情を踏まえると、運賃はこれ以上安くならないほか、そもそも決められた区間を走るバスには移動の柔軟性がなく、短距離の移動における課題を解決するには最適とは言えません。
そうした中、当社は短距離の移動の課題を解決するために、電動小型モビリティのシェアリングサービス『LUUP』を展開しています。展開しているモビリティの種類は、電動キックボードと電動アシスト自転車があります。
ここで重要なのは、いずれも「1人乗り」のモビリティであるということです。これが、運営コストを最小限に抑え、多くの人が手軽に利用できる価格設定を実現するためのポイントになるわけです。
とはいえ、シェアサイクリングは街で見かけることも増えました。そこで1人乗りであることと同じくらいに重要なのが、「車体サイズ」です。
【次ページ】Luupが「小型モビリティ」にこだわる納得の理由
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