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ASEANを中心にアジア各国では「デジタルバンク」の認可が次々に下りており、バンキングサービスの新たなトレンドとなっている。フィリピンで初めて開催されたイベントFinTech Festivalにおいても、「デジタルバンク」は「金融包摂(Financial Inclusion)」と並んで重要なテーマとして議論されていた。筆者がこのイベントに登壇し、フィリピンの中央銀行(BSP)から認可を受けて営業を開始したデジタルバンク責任者らの話からみえた、トレンドの背景とフィリピン固有の事情を日本のメガバンクのフィリピン市場動向とともに紹介する。
Philippine FinTech Festival
これまでに
香港、
シンガポール、
マレーシアの事例をとりあげてきたように、アジア各国では支店を持たないデジタルバンクのライセンスが次々と認可されている。
シンガポールでFinTech Festivalが2016年に開催されて成功をおさめたことに刺激を受けて、名称はそれぞれであるが、アジア各国において国を挙げてのフィンテック関連イベントの展開が続く状況となっていた。その波に乗り遅れたことに加えてコロナ禍もあって、フィリピンでは今年が第1回目となる
Philippine FinTech Festivalが、2022年10月18日から21日にマニラで開催された。
デジタル通貨、サイバーセキュリティ、人工知能(AI)、環境ファイナンスといった他イベントでも一般的にとりあげられているテーマも設定されていたが、フィリピン固有の事情もあって、最もホットなテーマとなっていたのが、「金融包摂(Financial Inclusion)」と、「デジタルバンク」であった。
イベントにおいては、デジタルバンクとしてのライセンスの認可を受けた6行の半分にあたる3行(Uno、UnionDigital、GoTyme)の経営レベルが登壇したメインパネルの議論に参加し、それぞれの生の声を聞くことができた。
金融包摂(Financial Inclusion)
ASEAN(東南アジア諸国連合)の中で多少経済成長に出遅れた感のあるフィリピンは、人口の7割程度が銀行口座を保有していない。これは、所得格差の問題とともに、国土が多くの島から構成され、銀行店舗が近くにない国民も多いというフィリピン固有の事情もある。
また、海外居住の「出稼ぎ労働者」が多く、外貨獲得の大きな役割を担っているというのもフィリピンの特徴である。一方、アジアの中でも若年層の割合が特に高く、日本や韓国は人口ピラミッドが「逆ピラミッド」となっているのに対し、フィリピンは「釣鐘型」となっており、今後の「人口ボーナス」による経済成長が期待できる。
そして、スマートフォンの普及が進んでいることを背景に、地理的な制約の解決につながるモバイル決済などのデジタル金融サービスが急速に浸透しつつある。
デジタルバンク
先進国におけるデジタル銀行は、既存銀行のデジタルトランスフォーメーションの一環として効率的かつ利便性の高いサービスを提供する手段として位置づけられる場合が多いが、フィリピンにおいてはデジタルチャネルを通じた銀行サービスの提供が、前述の金融包摂の解決方法として語られるケースが増えている。
銀行規制を担うフィリピン中央銀行(Bangko Sentral Ng Pilipinas:BSP)は、支店を持たないデジタルバンクの認可について2018年頃からの検討していたが、2020年にはガイドラインを発表して、認可に向けた手続きや体制について
発表した。
その結果、2021年には後述の6行に対してデジタルバンク免許が付与された。BSPは「綿密な金融監督を行うため、さらには既存行を含めて銀行間の適切な市場競争を確保するために、当面はそれ以上の新規参入を認めない」方針を明らかにしている。
【次ページ】ライセンスを取得した6行とフィリピン市場でのメガバンク動向
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