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フィンテック関連スタートアップの老舗ピッチイベントであるFinovateの欧州開催が、コロナによるオンライン開催を経て、2年ぶりにロンドンでリアル開催された。パネル登壇も含めた現地での筆者の取材によって、フィンテックに関する最近の議論とコンテスト受賞スタートアップの内容からみた新しいトレンドにふれていきたい。
伝統的フィンテックイベントFinovate Europeとは?
3月22~23日にロンドンで開催されたFinovate Europe 2022は、英国でのコロナ関連制限がすべて解除された後に執り行われた。
入場にワクチン接種の証明書もしくはPCR検査などの陰性証明提示が求められたものの、開催場所となったインターコンティネンタルO2ホテルに集まった数百名のほとんどが、会場内でマスクをしていなかった。日本からの参加にあたっては、ウクライナ侵攻の影響でロシア領空を回避したこともあり片道17時間ほどかかることになったが、現地での有識者との交流で得るものは多かった。
初日は、参加各社による7分ずつのピッチが次々と行われ、夕方には参加者の投票による受賞企業の発表が行われた。2日目は、フィンテックの最新動向にてついて、金融機関、IT企業、フィンテック企業、規制当局担当者、アナリスト、投資家などによる講演、パネルディスカッションが展開された。2年前に参加した時と比較して、アメリカやアジアからの参加者はかなり少なかった印象ではあるが、欧州各国からの参加者は相当数集まっていた。
こうした金融系のイベントとしては久々のリアル開催だけあって、今後の開催動向に影響を及ぼすものと思われるが、国際金融都市ロンドンでは4月以降従来通りに開催されイベントが増えるものと見込まれる。
Finovate Europeでの「DXをめぐる認識」
イベント中、多くのセッションにおいて金融業界全体でデジタルトランスフォーメーション(DX)への取組みが注目されていた。特に、個別プロセスのデジタル対応(Digitize)と業務全体のデジタル化(Digital Transformation)を区別し、既存金融機関におけるプロジェクトが前者の域を出ていないケースが多いという指摘が何度もあった。
あわせて、経営レベルでの意識改革とともに、組織全体の文化を変革しないとDXの成果が得られないという議論も繰り返し行われた。多くの欧州金融機関においてはリストラが進んでおり、DXと効率化がセットで語られることが多い。
コロナ禍によって組織内と顧客いずれもコミュニケーションが希薄になってきたと感じている実務担当者は多く、デジタル化とともの顧客接点の充実をどのように実現していくのかが大きな課題となっている。
決済ビジネスの変遷を振り返る
筆者が登壇したパネルは「先進技術、新しい競争やビジネスモデルが決済の未来をどのような変化をもたらすのか? 決済統合は今が旬か?」というタイトルで、欧州(ドイツ銀行のアナリスト)、アフリカ(暗号資産取引企業のCEO)、英国(決済業界団体の委員長)と議論を行うこととなった。
パネルにおいては世界的にスマートフォンの利用が大きくリテール決済に変化をもたらしつつあることに加え、中央銀行デジタル通貨(CBDC)が各国で話題になっており、世界的に決済インフラに変化がもたらされる予兆が生まれている点について意見が交換された。
また、JP Morganの「
Payment are eating the World 」(ブラウザNetscapeを作ったマーク・アンドリーセン氏が2011年に言った「Why Software Is Eating The World」のもじり)というレポートを書いたジェレミー・バルキン氏が登壇。同行が英国でデジタルバンクを開始、アイルランド、ギリシャ、ドイツで大規模な投資を行うなど、欧州マーケットでのプレゼンスを高めていることにふれ、以下のようにコメントした。
「かつてはつまらないと考えられていた決済は、デジタル化の進行とともに、地理的制約からの解放とデータ利用の両面からボーダーレスになってきており、非常にアクティブなビジネスとなっている」(バルキン氏)
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