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- 2022/01/04 掲載
2022年注目の「Web3」「FinOps」「デジタルID」とは? フィンテック予測
2022年に流行るフィンテックを予測する
2021年は、2020年に引き続き世界的にコロナ禍の状況が続き、フィンテックを含む金融業界は大きな影響を受けました。一方、2021年9月にPaidyが米PayPal(ペイパル)に買収されたニュースは記憶に新しいですが、枚挙に暇がないほど多くのフィンテック企業が多額の資金調達を成功させ、着実に金融インフラとしてフィンテックが根付き始めた年でもありました。
2021年に起こった事象をとらえ筆者が2022年のフィンテックトレンドと考える、「ハイパーパーソナライゼーション」「新世代コアバンキング」「グリーン×フィンテック」「FinOps(Financial Operations)のDX」「金融機関とテック大手の提携」「デジタルIDの普及」「DeFi(分散型金融)/Web3」を解説します。
ハイパーパーソナライゼーション
ハイパーパーソナライゼーションとは、簡単に言うとマスリテール層の顧客に対して個別最適な体験を提供しようというものです。AmazonやNetflixなど金融以外のサービスでは比較的早くから取り込まれてきましたが、こちらの記事で指摘した通り、フィンテックの世界にもこの波が確実に訪れてきています。長い間、オンラインの金融サービスは画一的なユーザー体験しか提供できていませんでした。しかし、顧客との接点がオフラインからデジタルチャネルへと着実にシフトしていく中、どのように顧客エンゲージメント(顧客が企業に感じる信頼・親密さ)を高めるかが重要になっています。
顧客エンゲージメントを高めるための手法の1つがハイパーパーソナライゼーションです。たとえば、顧客が置かれている状況、事情を勘案し、適切なタイミングで最適なオファーを届けることで、コンバージョン率の向上が見込めるでしょう。
あるいは、チャットボットのような無機的なインターフェースにおいても、さも有人エージェントとやり取りしているようなスムーズさを実現できれば、顧客の満足度は確実に高まります。「お仕着せ」から「あなたのエージェント」のように振る舞うことで、顧客の心をつかむことができます。
新世代コアバンキング
今年の9月に、米国のメガバンクであるJPモルガン・チェースが英国ロンドンに本拠地を置くフィンテック企業であるソートマシーン(Thought Machine)のコアバンキングプラットフォーム「Vault」を採用するとの発表が大きな話題となりました。連続起業家でありグーグル(Google)にも在籍したことがあるポール・テイラー(Paul Taylor)氏は2014年、新世代のコアバンキングシステムを開発するために同社を設立しました。Vaultはコアバンキングパッケージとしてはあらゆる面で近代的に作られており、リアルタイムで更新されるマスター台帳をベースに、スマートコントラクトと呼ばれる業務ロジックで機能を拡張し、クラウド上でネイティブに稼働します。
米国の銀行では、ゴールドマンサックスが個人向け事業「Marcus(マーカス)」でもクラウド上にシステムを構築しています。いくつかの地銀もバンキング向けソフトウェアを手掛けるテメノス(Temenos)のクラウドで稼働する「コアバンキングパッケージ」を採用し始めました。
急速に利用者を増やしているチャレンジャーバンクやネオバンクとの競争に伍していくためには、基幹系のオーバーホールが必要です。機能の拡張性や外部とのAPI接続性を確保するために、新世代コアバンキングシステムの採用は加速するでしょう。
グリーン×フィンテック
世界的にESG(環境、社会、ガバナンス)が意識され、脱炭素の流れが加速する中、フィンテックと脱炭素(グリーン)は急速に接近しつつあります。グリーン・フィンテックやクライメート(気候)・フィンテックとも呼ばれるこの新分野は、ベンチャーキャピタルの投資を集めており急速に成長しつつあるセクターです。現在最も注目されているのは、サステナビリティデータのプロバイダーと金融の組み合わせです。ドコノミー(Doconomy)やイェイジー(Yayzy)、コグ(Cogo)といったスタートアップ企業は、消費者の購買行動に紐づく炭素排出量を計算し「リアルタイムのCO2排出トラッカー」として外部に提供しています。
イタリアのデジタルバンクのフロウェ(Flowe)は、Doconomyのサービスを使って、同行のデビットカードユーザーに対してCO2排出量を可視化し、サステナブルな行動変容(より炭素排出量の少ない行動)を促しています。
ネットパーパス(Net Purpose)はESGデータを提供し、個人投資家が投資先企業やその他の投資の影響を追跡、報告、測定できるサービスを提供します。金融機関や大企業、機関投資家だけでなく、個人レベルで脱炭素・サステナビリティを意識する時代へと確実に移行していると言えるでしょう。
炭素除去の領域でもスタートアップ企業が続々と生まれています。パッチ(Patch)が提供する“脱炭素 as a Service”は、数行のコードを自社のサービスに埋め込むだけで炭素クレジットが買える仕組みを提供するAPIを提供します。
ブロックチェーンも、また炭素除去には有効な技術です。ノリ(Nori)はブロックチェーンを用いた脱炭素のマーケットプレースを運営しています。農家が固定した炭素量に合わせてトークンを発行し、買い手とマッチングする仕組みで、ブロックチェーンが持つ対改ざん性、P2P取引といった特性を生かした仕組みとなっています。
ビットコインのブロックチェーンはProof of Workというコンセンサスアルゴリズムを利用しており、マイニングのために大きな電力を必要とします。しかし、脱炭素で用いるブロックチェーンの多くは効率的なアルゴリズムを利用するため、環境負荷はかなり低いものとなっています。
【次ページ】「FinOpsのDX」「DeFi(分散型金融)/Web3」を解説
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