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1月14~15日、香港で開催されたAsian Financial Forum(AFF)2020 に参加した。AFFは、香港の中国返還後、国際金融都市としての存在感を示すために、特別行政区政府が貿易発展局(HKTD)を中心に主催している大規模な金融イベントである。2019年に認可されたバーチャルバンクの当事者も多く登壇するなど、フィンテック関係者も注目する最新情報をレポートする。
「フィンテックの集積地」を打ち出したAFF 2020
今回が13回目の開催となるAFFだが、2019年から大規模なデモが続いている中、金融都市としての機能が揺るぎないものである点をアピールすべく、香港の威信をかけた開催となった感がある。冒頭の開会挨拶に行政トップのキャリー・ラム長官が登場して、香港金融業界が「Business as Usual」であることを強調したことからも、それがうかがえた。
筆者が2017年に参加した際は、中国本土から大代表団が参加し、「一帯一路」が大々的に取り上げられ、香港が中国と西側諸国の接点としての役割を果たしていくことが強調されたが、今回はデモが頻発する香港内の反感に配慮したせいか、あまり目立たない扱いとなっていた。
かわりに大きな扱いとなったのが、「フィンテックの集積地」としての香港をアピールすることであり、先行するシンガポールが国策としてフィンテックを推進するのに対抗していこうとする姿勢が見られた。
2017年に筆者はデジタルイノベーションのパネルディスカッションに登壇したが、そのときはフィンテックに関係のあるセッションはそれだけであった。
今回は対照的にフィンテックやデジタルトランスフォーメーション関連のセッションが多く設定されただけでなく、展示スペースの主役も、以前の大手金融機関やIT企業から、世界中から集まった100社近いフィンテックスタートアップのブースとなっていた。FINOLABからも
カウリス と
マネーソー 、卒業生である
財産ネット がブースを出展した。
中国の「テックフィン」の存在感
今回のAFPでは、中国本土のアリババ、テンセント、バイドゥといったIT大手(テクノロジー発ということで、「テックフィン」と形容されることも多い)の金融ビジネス拡大を香港が資金調達やアジア進出の面でサポートする「中国本土の玄関口」としての役割も強調された。
特にスタートアップが急増している深圳との人的、経済的な結びつきが強まっていることもあり、香港やマカオ、広東省を示す「珠江デルタ」の9都市(広州、深圳、東莞、恵州、仏山、江門、中山、珠海、肇慶)を統合する「Greater Bay Area」といった表現も度々使われていた。
こうしたフィンテック推進の象徴が、店舗を持たない「バーチャルバンク(VB)」ライセンスの導入であり、今回のAFFにおいて複数のセッションで取り上げられた。
香港金融管理局(Hong Kong Monetary Authority:HKMA)によってバーチャルバンク設立を実質的に可能とするガイドラインが2000年に発表されたが、実績のある金融機関のマジョリティ出資であることが必須であったため認定実績はなかった。
フィンテック推進の一環として、テクノロジー企業や通信事業者でも参入が可能となる修正ガイドラインが2018年に発表され、2019年になってから次々とライセンス認可が発表され、8行が新規設立されることになった。
デモの混乱もあって事業開始が遅れ、AFF開催段階ではZA Bankの試行サービス開始にとどまっていたが、香港金融管理局、新銀行経営陣や参入企業担当者の登壇による認可や参入の背景や今後の見通しを論じるセッションもあったことから、全体像をまとめておきたい。
【次ページ】バーチャルバンクの参加企業から見える中国本土との強い関係