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- 2021/08/26 掲載
金融庁の「分散型金融研究」を解説、その成果や論点とは何か?
ブロックチェーンを軸とする「分散型金融システム」の課題
金融分野では現在、ブロックチェーンなどの分散型技術を応用した「DeFi(Decentralized Finance:分散型金融)」によるエコシステムが急速に拡大している。そのため、多くの金融機関にとっては、DeFiシステムにおける課題への対応やガバナンス上の論点について理解を深めることが重要だといえる。仲介機関が不要となる分散型金融システムでは、従来型の「エンティティ・ベース」の規制アプローチでは「マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策(AML/CFT)」や利用者保護といった規制目標の達成が困難となるケースも想定される。
また、ビジネスの領域では「安全性検証が不十分な技術を金融取引に実装する」ことや「法令の理解不足による不十分な規制対応」などのリスクも考慮すべきだ。さらに規制当局においては、規制対象となる仲介機関が不在である可能性や、自律的システムという運用形態で問題が顕在化したサービスに対する業務停止などの措置を講じる必要がある。しかし、その規制の実効性確保が困難になることも考えられる。
FinTech Innovation Hub 活動報告[第2版]では、「ブロックチェーン技術や分散型金融システムの課題解決への取り組み」「デジタル・イノベーション支援」「フィンテック・ステークホルダーとの交流」「ステークホルダーへのヒアリングを通じた情報収集」などの取り組みがまとめている。
同報告書には、分散型ネットワークとしてボトムアップ型の発展を遂げたインターネット・ガバナンスの教訓を踏まえ、健全なエコシステムの発展に向けてステークホルダーの相互理解と課題解決に向けた議論を深める必要性が示されている。
また、「各ステークホルダーが各自の役割と責務を認識し、従来型の規制アプローチにとらわれず、イノベーティブな環境整備と規制目標の達成の両立を目指す」ことで、分散型金融システムを取り巻く課題解決につながると説く。
ブロックチェーン国際共同研究で明らかとなった論点
ここからは、活動報告[第2版]に記載された、ブロックチェーン技術や分散型金融システムの課題解決への取り組みについて見ていこう。まず、2020年8月に公表した「令和元年度ブロックチェーン国際共同研究(ブロックチェーン技術等を用いた金融システムのガバナンスに関する研究)」(以下、国際共同研究)の状況を紹介する。
国際共同研究では「インターネットにおけるマルチステークホルダー・ガバナンス(MSG)の成立過程や、技術がもたらした社会課題解決にMSGがどう貢献したか」などの調査・分析を実施し、分散型金融システムにも適用可能なMSGアーキテクチャを提示したという。
また、国際共同研究の調査で明らかになった主な論点として、以下の項目が挙げられている。
- 分散金融システムがもたらす課題の整理、課題解決に当たってMSGが有用であると考えられる根拠
- ガバナンス活動のアウトプットのイメージ、それが技術の発展と社会的課題の解決につながるための具体的なメカニズム
- 既存の金融システムのガバナンス構造との関係・比較分析(たとえば、各種国際規制設定主体や各国規制当局との関係を含む)
- 関与が必要となるステークホルダーの特定と各ステークホルダーがガバナンス活動に参加するためのインセンティブの設計
- 活動開始後に具体的に取り扱うべき課題の例
【次ページ】ブロックチェーンコミュニティの持続的な発展を目指す「BGIN」設立
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