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- 2021/01/14 掲載
“脅威的な出来高”の分散型金融(DeFi)、識者が語る金融機関の「向き合い方」
ニューノーマル時代のDeFiはどんな存在になるのか?
金融機関や取引所といった中央集権的なシステムによる取引仲介ではなく、価値移転を成立させるブロックチェーンを活用して特定の管理者を排除した金融取引を可能にするDeFi。取り扱うサービスはスマートコントラクト(契約の自動化)によって同期され、外部の金融サービスとの連携する場合のAPI開発などの作業が少なくなる。非中央集権型の仕組みであることから、金融取引の透明性や利便性が向上すると期待されている。まずDeFiについて、auフィナンシャルホールディングスの藤井氏は、代表的なサービスを紹介。特に、中央管理者のいない暗号資産の取引所として機能する「DEX(分散型取引所)」が中心的な存在になると説明した。その他にも、ブロックチェーンの外から価格を持ち込むミドルウェア「分散型価格オラクル」やスマートコントラクトの設計上の問題やセキュリティ分析を行う「SC監査」も関連技術として含まれているという。
また、藤井氏は「DeFiを金融サービスと捉えた際には、規制との関係は切り離せない」と指摘する。同氏は規制の観点から見たDeFiの特徴として「中央機関の仲介がなくても取引が可能」「金融機関が介在しない(P2P)取引が本人確認なしの匿名で実現できる」点から、特定の対象組織が存在しない“緩いコミュニティ”であると表現した。
次に、パブリックチェーンが不特定多数のノードによる分散運用されていることから、「問題発生時の修正や停止が非常に困難である」「システム利用のリスクについては自己責任である」点を挙げた。さらに「国境という概念がなく規制の対象地域や領域の特定が困難である」点から「規制とは切り離せない一方で、従来の金融サービスの性質とは捉えづらい点が多いのが特徴だ」と説明した。
取引所から見ると「DeFiは困った存在」
特定の仲介者が存在しなくても運用可能なDeFi。暗号資産などの金融商品を取り扱う取引所はどう捉えているのか? 国内で暗号資産取引サービスを展開するbitFlyer Blockchainの金光氏は「取引所が行う際には体制整備や免許取得などが必要になる業務をプログラム実装したり、取引所が取り扱えないDeFiトークンが盛り上ったりするのを横目で見ていると“なかなか困った存在”である」と表現した。また、2020年9月には「DEXの出来高が中央集権型取引所の出来高に迫っている」とも報道されるなど、「DeFiが一定のキャズムを超えたことを受け、取引所として何ができるかを考えている」と説明する。
具体的な事例として、金光氏は、DeFiサービスの1つであるレンディング(貸付)プラットフォーム「Compound」を挙げた。
Compoundは、Ethereum(イーサリアム)上のスマートコントラクトで暗号資産(仮想通貨)を貸し借りするプラットフォームだ。スマートコントラクトで利率の計算式が決められ、貸し手と価値手の需給に応じた利率が決定される。
貸し手が拠出した対象仮想通貨をプールし、ここから借り手が貸借料を払って借りる仕組みを取っている。一定の条件になると強制的に清算されるなど常に超過担保が保たれているプログラムであることが特徴だ。金光氏は「2018年の運用開始から、特に今まで大きなトラブルがなく運用できているのはすごい」と評価する。
「金融機関がいない世界」をつくるきっかけにも
金融機関側から見ると、Defiをどう捉えるべきだろうか? あずさ監査法人の保木氏は「ビットコインなどはDeFiには含まれていないことが多いが、DeFiの成立にはビットコインは関係している。DeFiが登場したことで銀行機能の一部が置き換えられる可能性が高まっている」との見解を示した。たとえば、ビットコインに代表されるようなP2P取引による価値移転をさせる分散型金融が広まっており、これは銀行業務でいう為替取引を代替しているという。規制ができないゆえに止められない点から、中国ではビットコインが規制されているのにかかわらず、稼働し続けて着実にユーザーを増やしている点は注意すべきだ」と説明する。
また、Compoundの仕組みについては「預金者が借り手と直接結びついておらず、預けた金利をもらうことができるので預金に近い動きをしている。また、貸付も担保掛目の範囲内で借りれる点は預担貸付に近い」と指摘。預け入れや貸付けなどの銀行機能に通じるものがあり、「DeFiの進展によって金融機関がいらない世界も広がってきてしまう。この点に、金融機関は留意してほしい」(保木氏)とした。
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