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  • 2020/08/12 掲載

日本市場はとっくに凋落、行政の縦割りが招いた「総合取引所」13年がかりでも残る課題

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これまで別々の取引所で売買されていた証券デリバティブ(金融派生商品)と貴金属やゴムといった商品先物が大阪取引所に集約されることになった。複数の商品を一括して売買できる「総合取引所」の実現は13年越しの悲願とされるが、関係者の利害調整でもたついている間に、日本の金融市場の地位が大きく低下したのも事実だ。
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13年越しの「総合取引所」の実現も、その間に日本の金融市場の地位は大きく低下してしまった。その理由とは
(Photo/Getty Images)
 

証券デリバティブと商品デリバティブは別々の市場だった

 日本取引所グループ(JPX)は2020年7月27日、傘下の東京商品取引所(TOCOM)で取引されていた金や銀といった貴金属、とうもろこしなどの農作物の取引の多くを、同じくグループ内の大阪取引所に移管した。大阪取引所は株価指数先物などの証券デリバティブを扱っているが、これに商品先物が加わるので、投資家は大阪取引所で一元的に取引ができるようになる。

 かつては、証券デリバティブと商品デリバティブが別々の取引所で売買されるのは当たり前のことだったが、ここ20年の間に両者を一元的に扱う動きが活発になり、各国の取引所は「総合取引所化」を急ピッチで進めてきた。日本だけがその流れに取り残されており、13年の歳月をかけて、今回ようやく統合を果たした。

 バラバラだった取引の集約化が行われたのは、金融市場の高度化が進み、複数の商品カテゴリーを一元管理したいというニーズが高まってきたからである。

 これまで投資ファンドなど機関投資家の主な投資対象は株式と債券であった。景気が良く企業業績の継続的な拡大が見込める時には株式ファンドの成績が上がり(逆に債券は値下がりして利回りは上昇)、不景気で株価が軟調なフェーズでは債券が買われて債券ファンドの収益が上がる(債券の利回りは低下)。一部の投資家は理論的に逆相関となっている債券と株式を両方保有することでリスクヘッジを行ってきた。

 だが、金融市場が高度化し、さまざまな商品が登場してきたことで、株式と債券を組み合わせた古典的な投資理論だけでは十分に効果を発揮しないケースが増えてきた。ここ2~3年の市場環境はその典型例だが、株高と債券高が同時進行しているので従来のポートフォリオではリスクヘッジできない。

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各国の取引所は「総合取引所化」を急ピッチで進めてきた一方、日本だけがその流れに取り残されていた
(Photo/Getty Images)
 

従来の投資手法が通用しない市場におけるリスクヘッジとは

 本来、逆相関になるはずの株式と債券が同じ動きになっているのは、量的緩和策という前代未聞の金融政策を長期間にわたって実施していることが原因である。量的緩和策は市中に大量のマネーを供給し、インフレ期待を生じさせることで実質金利(名目金利から期待インフレ率を差し引いたもの)を低下させ、これによって企業の設備投資増大を図る施策である。

 マネーが大量供給されれば、貨幣の価値は毀損するので、一般論として株価は上昇し、期待インフレ率も上がる。期待インフレ率が上がれば、債券価格は理屈上、下落するはずだが、中央銀行が大量に国債を購入するので債券価格は逆に上昇する。結果として量的緩和策の影響下では、低金利と株高が同時進行するという特殊な状況になる。

 そうなると従来の手法では十分にリスクをヘッジできなくなり、機関投資家は対応に苦慮することになる。実際、日本の公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も、近年の市場環境の変化によってポートフォリオの見直しを迫られている。

 GPIFは安倍政権の強い意向を受け、積極的に株式に投資するリスクの高い投資を行ってきた。



 現在は株高が続いているので運用総額の増加が続いているが、株式中心のファンドは株価が暴落すると、一気に損失を出すリスクがある。だが今の市場環境では債券だけでヘッジすることができず、GPIFは新しい投資対象を開拓せざるを得ないのが実状だ。

【次ページ】取引が複雑化する中、投資家から選ばれる取引所の特徴とは
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