- 2025/01/20 掲載
トランプ復活政権「2.0」始動、日本の外交が生き残るための「3つの交渉原則」(3/3)
トランプの交渉原則3:自己愛が強く、「ミウチ」関係を重視
トランプは自信家で、自己肯定感の強いナルシストである。彼のTwitter(現X)を分析したNYT特集記事によると、内容の多くは自画自賛と政敵攻撃で、トランプを褒める投稿に良く反応するという。自伝には書かれていないが、彼の“急所”はそこにある。「他人(ソトの人)」は信じず、疑心暗鬼に陥りやすい反面、「ミウチ=ウチ」との関係は大切にする。トランプ取引のwin-winとは、ドライな損得の一致いわば利益共同体の側面だけでなく、個人的な信頼と“情”の絆も含んでいる。
トランプは「ミウチ」の結束を重視する。まず家族と側近である。「1.0」ではイヴァンカ、クシュナーの娘夫婦を重用、最近では三男バロン(写真3)の政界進出が注目の的だ。
側近も、中央政界の人脈を欠き長年信頼する側近だけで展開した2016年選挙当時のスタッフを、2024年選挙で再招集した。「2.0」政権の側近人事も、首席補佐官に指名されたスージー・ワイルズ(写真4)をはじめ、チームトランプへの貢献度と忠誠に対する論功行賞で採用し、情報漏えいや異見公言などの“裏切り”が頻発した「1.0」とは異なる、信頼できる「ミウチ」重視の陣容である。
ただし盲従的忠誠というより、信頼関係の深さや長さが重要らしい。たとえば、選挙や政権に長く貢献し、人脈・つながりも深いFOXテレビとは、対立しても関係が断絶せず維持されてきた。
また広い意味の「ミウチ」である積年の支持層やMAGA派などの“顧客”、献金者や支持団体・国内企業などの“株主”に対する忠誠心、公益よりも彼らの利益を優先する「米国第一主義」(国内産業保護、製造業復興と国際環境規制の無視など)は、企業経営者の面目躍如たるものがある。
トランプは道徳や法を超越しても、彼を信奉する2021年1月6日議会襲撃事件の被告らを擁護し続け、新政権発足後に恩赦を与える方針という。また「岩盤支持層」との関係強化に加えて、24年選挙ではハリス陣営のようにむやみに支持層拡張を狙わず、絞りこんだ“ミウチ予備軍”との「個人的関係作り」に注力し、激戦州アリゾナのラテン系有権者獲得に成功した。
日本への教訓は何か。日米同盟だけでは「ミウチ」にならない。NATOに対するトランプの冷淡さを見ても明らかだ。トランプ「2.0」の最強の基盤は、24年選挙で得た「過半数信任(注2)」である。この支持基盤を維持し、絆を固めて「ミウチ」にしなければならない。「ミウチの友ならば友」、すなわちこのトランプ支持者連合の世論を味方にすること、彼らが関心をもつ政策でWin-Winが可能な具体案を訴求する「広報外交」(外国の国民世論に直接訴える情報戦略)は、効果的かもしれない。
それは、トランプのレガシー作りや2026年中間選挙勝利にも役立つ。トランプ・パニックに陥らず、日本側の取引の「手札」として何が使えるかを考えることが、「2.0」対策で最も必要だろう。
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