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- 2024/01/16 掲載
物価目標「下方修正」でもマイナス金利解除は4月のワケ、その後はどうなるのか?
【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」
日銀は物価見通しを下方修正へ
1月12日付で時事通信が報じたところによると、日銀は1月23日に発表する展望レポートにおいて、2024年度の物価見通しを2023年10月時点の前年比プラス2.8%から2%台半ばへ引き下げるという。日銀は2023年7月時点で1.9%としていたものを、10月には2.8%へと大幅に上方修正していたが、それを再び引き下げることになる。下方修正の詳細な要因は不明だが、過去数ヶ月、食料品価格の上昇鈍化から、消費者物価指数が急速に低下していたことがあるとみられる。消費者物価指数(全国)は生鮮食品を除いたベースでプラス2.5%まで伸び率が鈍化、東京都のそれはプラス2.3%と2%割れが視野に入りつつある。
仮に報道通りとなれば、1月にマイナス金利が解除される可能性はほぼ消失したといって過言ではない。物価見通しの引き下げと金融緩和の解除は、常識的に考えて相いれない組み合わせである。もちろん、能登半島地震に伴う経済活動の下振れリスクを見極める必要もある。
マイナス金利は「異常」、4月解除予想の理由
とはいえ、マイナス金利という極端な金融緩和は早晩解除されるだろう。その時期について筆者は3月の金融政策決定会合で階層構造方式の見直し等について何らかの予告をした上で、4月にマイナス金利解除に踏み切ると想定している。また、その後の展開については当分の間、政策金利を据え置くと予想している。それは後述するとおり、日本経済は欧米対比で賃金上昇率が低いため、インフレ退治を目的とする連続利上げが必要な状況に至らないと判断しているからに他ならない。
日銀は2%目標の安定的達成が見通せるまで金融緩和を粘り強く続けるとしている。その点、4月の段階ではそうした見通しに強い自信を持てる状況にはならないと判断される。
ではなぜ日銀はマイナス金利を解除するのかといえば、それはマイナス金利が「異常」であるからだ。マイナス金利は、2016年1月に、金融緩和の手段が尽きた末に導入された奇策であり、それを賃金・物価がともに「デフレではない状況」に回帰した現状においてなお継続していることの妥当性は揺らぎつつある。
こうした事情を踏まえると、マイナス金利解除の説明は「(マイナス金利解除は)必ずしも金融引き締めではない。金融緩和を長く継続するための措置」との論法が用いられるのではないか。もちろん過度な円安に対する警戒もあるだろう。 【次ページ】マイナス金利解除後はどうなるのか?
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