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  • 2023/09/14 掲載

マイナス金利撤廃は2024年1~3月か、いよいよ現実味を帯びてきた理由とその条件

【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」

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9月9日に読売新聞が植田総裁の単独インタビューを報じたことで、にわかにマイナス金利撤廃が現実味を帯びてきた。具体的に何を語ったのだろうか。また、マイナス金利撤廃に関するいくつかの論点を整理し、今後のシナリオを考えたい。
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9月、植田総裁は何を語ったのか?
(Photo/Shutterstock.com)

1~3月ごろが焦点? 現実味を帯びてきたマイナス金利撤廃

 冒頭の読売新聞が報じた植田総裁の単独インタビューの要旨は、以下のとおり。

  • 「物価目標の実現にはまだ距離がある。粘り強い金融緩和を続ける」
  • 「経済・物価情勢が上振れした場合、いろいろな手段について選択肢はある」
  • 「マイナス金利の解除後も物価目標の達成が可能と判断すれば、(解除を)やる」
  • 利上げ時期について、「到底決め打ちできる段階ではない」としたものの、来春の賃上げ動向を含め「年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」とした。
  • 今後の政策修正について「いろいろなオプション(選択肢)がある」

 インタビュー全体としては、粘り強く金融緩和を続ける、というこれまでの見解が維持されたものの、マイナス金利撤廃に関して「年末」という具体的時期に言及したことは驚きであった。

 利上げ時期の文脈における「年末」というのは、最タカ派で知られる田村委員(民間銀行出身)が8月30日に示した時期よりも早い。同委員は以下のように発言。
2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現が、もうすでにはっきりと視界に捉えられる状況になったと考えておりますが、物価見通しは上方向にも下方向にも不確実性があって、状況の見極めにはもう少し時間が必要であると考えています。こうした中で来年の1~3月頃になれば春闘に向けた労使のスタンスが明確になってくると考えられること、また、当面CPIはプラス幅を縮小していくとみられますが、そのCPIが実際にどのようなパスを辿っているかも確認することができる。
 「1~3月ごろ」が市場関係者の注目を浴びていた。

 もちろん、今回のインタビューは為替市場に向けた「口先引き締め」の意図を有していた面もあるだろう。確信犯的に市場参加者の過剰反応(円買い)を狙うためにあえて「年末」に言及した可能性はある。

 ただし、それでも僅か3カ月後に迫っている年末(≒12月18-19日の金融政策決定会合)に、マイナス金利撤廃の議論が俎上(そじょう)に上ることに含みを持たせた意味は大きいと筆者は考える。

マイナス金利撤廃に向けた根拠・条件

 植田総裁以下、中枢メンバーはすでにマイナス金利撤廃に向けた準備を進めている可能性があるだろう。筆者は2024年後半としていたマイナス金利撤廃時期を2024年前半に変更した。

 以下、マイナス金利撤廃に関するいくつかの論点について、整理してみたい。

・仮にマイナス金利撤廃があるとすれば、その根拠や条件はなんだろうか。
 日銀は「インフレは一時的、基調的なインフレは2%を下回っている」と繰り返しており、7月展望レポートの見通しは2023年度がプラス2.5%、2024年度がプラス1.9%、2025年度がプラス1.6%と見通し期間の後半にかけて2%を下回る姿になっている。

 また日銀は「金融引き締めに転じるのは2%目標の達成が見通せるようになってから」と繰り返している。普通に考えれば、インフレの実績値が2%を上振れ、かつ2年程度先までその状態で推移するとの予想がたつときに金融引き締めが実行される。

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「物価上昇は一時的、基調的なインフレ率は2%を下回っている」として金融緩和姿勢を維持する日銀
(Photo/Shutterstock.com)

・物価見通しの前提となる賃金データは?
 一人あたり賃金を捕捉する毎月勤労統計によると7月の現金給与総額は前年比プラス1.3%となり6月のプラス2.3%から減速したものの、賃金の根幹である所定内給与(≒基本給)はプラス1.6%へと加速し、賃金の基調が底堅いことを示した。

 所定内給与は一般労働者(≒正社員)に限定するとプラス1.9%まで伸びており、春闘賃上げ率に整合的な値となっている。ヘッドラインの現金給与総額は所定外給与(≒残業代)がプラス0.3%、特別給与(≒賞与)がプラス0.8%と共に減速したことから弱含んでいるが、基調的な賃金を示す所定内給与は崩れていない。

 一人あたり賃金は、依然として消費者上昇率を大幅に下回るとはいえ、マイナス金利プラスYCCという強力な金融緩和を解除するには、十分な伸びとみることもできる。 【次ページ】今後のシナリオ、政策変更のプロセスとその時期
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