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  • 2023/07/20 掲載

日銀内田副総裁の発言を読み解く、7月金融政策決定会合で緩和修正はあり得るのか?

【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」

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7月7日に日経新聞が報じた内田真一副総裁のインタビュー記事をきっかけに、7月の金融政策決定会合で日銀が政策修正に踏み切るとの見方が浮上。金融市場では長期金利(10年金利)が7月6日の0.41%から7月13日にかけて0.48%付近まで上昇した。為替市場ではFedの利上げ終了観測の高まりと相まって、145円付近から138円付近までやや急激なペースで円高が進行している。内田副総裁の発言をもとに、現状分析とこれからを予想する。
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注目を集めた内田真一日銀副総裁の発言
(写真:ロイター/アフロ)

急激なペースで進行する円高と緩和修正の含意

 日経新聞が報じた内田副総裁のインタビュー記事の要旨は以下の通りである。

  1. 長短金利操作(イールドカーブコントロール、YCC)の見直しは、金融仲介や市場機能に配慮しつつ、いかにうまく金融緩和を継続するかという観点からバランスをとって判断していきたい。

  2. このところ予想物価上昇率が高まっており、実質金利は一段と低下していると思う。そのもとで、今春の賃上げにみられるようにデフレ期に定着していた企業行動にようやく変化の兆しが出てきた。

  3. もし(マイナス金利を)解除するなら実体経済面の需要抑制で物価上昇を防ぐのが適切と判断したということになる。0.1%の利上げだ。

 まず1.については、ごく当たり前のことを言っているように思えるが、これまでの日銀の情報発信を踏まえると、緩和修正の予告とも捉えることができる。というのも、これまで日銀が金融緩和を引き締め方向に修正した際の説明は「金融緩和を長く継続するために、こうした措置が必要」と説明してきた経緯があるからだ。

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緩和修正の予告とも捉えることができたが、現時点での修正は否定
(Photo/Shutterstock.com)

 たとえば、10年金利操作目標の変動許容幅をプラスマイナス0.25%からプラスマイナス0.5%に変更した2022年12月20日の金融政策決定会合の声明文には「今回の措置により、イールドカーブ・コントロールを起点とする金融緩和の効果が、企業金融などを通じて、より円滑に波及していくと考えており、この枠組みによる金融緩和の持続性を高めることで、『物価安定の目標』の実現を目指していく考えである」とあった(下線は筆者)。

 日銀の情報発信を平易に代弁するならば「今回の修正は金融引き締めではありません、むしろこれによって金融緩和が長く続けられることになるので緩和的な意味を持ちます」と言った具合だ。「バランスをとる」という表現に緩和修正の含意があると感じた投資家はそれなりに多かったとみられる。

上向く「予想物価上昇率」

 2.については、昨年夏以降、食料品などの値上げが連日のように報じられていることからも明らかなように、企業の価格設定スタンスが上向き(値上げに積極的)に変化する下で、日銀が重視する「予想物価上昇率」が各種指標で上向いていることについての言及である。

 予想物価上昇率を計測する指標としては、日銀短観で集計される企業の予想物価上昇率および販売価格計画、家計に対するアンケート調査、債券市場における物価連動国債の利回り(と名目金利の差)などがあり、それらがいずれも上向いている。


 日銀は基調的なインフレ率は「予想物価上昇率」と「需給ギャップ」によって決まると説明しており、これまで予想物価上昇率が高まらないことをもって「しつこいデフレマインド」と表現してきた経緯があるため、予想物価上昇率の上昇に言及したことはそれなりに意味がある。

 3.は、マイナス金利を撤回する際の利上げ幅について具体的な数値に言及したことが注目された。もちろん「もしも」の話ではあるが、「日銀内部でマイナス金利撤回の議論が進んでいるのでは?」との臆測が生じた模様だ。 【次ページ】内田副総裁の発言が注目された背景
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