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  • 2024/08/05 掲載

建設業法改正で押さえておくべき5つのポイント、「持続可能な建設業」は実現するのか

連載:現場の声から読み解く建築業界のリアル

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建設業は、ほかの業界と比べて、労働時間が長いわりに賃金が低く、そうした事情から業界の担い手の確保が困難となっています。これに対し、国としても法の側面から問題を解消すべく、建設業法の改正に向けた動きが活発化しています。そこで、今回は建設業法を始めとした法律について、どのような改正が行われるのか、また、その改正によって、建設業界の何が変わるのかを具体的な事例を交えて解説します。
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持続可能な建設業を目指した法改正について詳しく解説する

「建設業法」の改正で一体何が変わるのか?

 建設業法等の改正は、2024年6月7日に成立し、同月14日に公布されています。その後、原則として公布の日から起算して1年6カ月を超えない範囲内において政令で定める日から施行されます。今回の法改正では、主に以下5つが改正されています。

  • 現場技術者の選任義務の合理化
  • 不当に低い請負代金の禁止
  • 著しく短い工期の禁止
  • 工期変更の協議円滑化
  • 労働者の処遇改善

※上記の1.4.5などは公布の日から起算して6カ月を超えない範囲内となっていることから、年内の施行が予定されています。

 これらの改正は、処遇改善・労務費へのしわ寄せ防止・働き方改革および生産性向上が目的とされています。

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建設業法改正で業界内はどのような変化があるのだろうか

1ページ目を1分でまとめた動画
 1つ目の「現場技術者の選任義務の合理化」について、現行の法律では、4,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上の請負金額の工事に関しては、現場技術者(主任技術者・監理技術者)は「専任」配置が必要です。

 しかし、人手不足により必要な技術者を確保することが難しくなってきていることから、これを緩和しようとしているのが、今回の改正点になります。

 内容としては、以下の要件を満たしている場合は2つの現場の兼任を可能とする予定となっています。

  • 音声・映像の送受信が可能な環境が整備されている
  • 施工体制がCCUSなどにより遠隔からの把握が可能となっている
  • 連絡要員を配置し、下請次数が3次以内である
  • 労働時間が過大にならないよう、人員配置などの計画書作成・保存を行っている

 これにより、技術者の現場の掛け持ちが可能になることから、技術者不足による受注機会の損失を減らすことができると考えられます。ただし、兼任可能な請負金額については、1億円(建築一式は2億円)未満になる予定で、規模が大きい工事については、引き続き、兼任禁止となります。

 また、営業所専任の技術者についても、従来は、営業所と近接し、常時連絡体制が整っていることを前提に非専任現場との兼任は可能となっていましたが、こちらについても先述した条件をクリアすれば、1専任現場までは兼任可能となる予定です。

 とはいえ、現場を兼任することによる当該技術者への負担については、補佐する人を用意したり、手当として給与に反映したりするなど、企業として対策を講じる必要があることを忘れてはならないと筆者は考えています。

不当な「請負代金」と「工期」の適正化

 次に、2つ目「不当に低い請負代金の禁止」について、建設業者は、自らが保有する低廉な資材を建設工事に用いることができるといった正当な理由がない限りは、請負工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を、請負代金の額とする請負契約をしてはならないとされます。

 これは、建設業界全体の健全な発展には必要な考え方であり、企業が存続するために利益がまったく出ないことを前提とした工事の受注の仕方は、本来であれば適切ではないことから、これを法律として禁止するという趣旨になります。

 3つ目「著しく短い工期の禁止」について、いわゆる「工期ダンピング」と言われており、これまでは注文者のみ禁止をしておりましたが、今回の改正により「受注者」側も禁止となります。

 これは、建設業は、社会資本の整備や維持管理の担い手であり、災害時には「地域の守り手」として、地域社会の安全・安心を守る役割を果たしています。しかし、ほかの産業に比べて相当長い労働時間となっており、工期ダンピングによる早出・残業や土日・休日出勤が、長時間労働の原因であると考えられるためです。

 そして、これを受注者側にも禁止することで、自社の労働環境を改善することにつながり、結果として、業界全体のイメージをプラスに変えることができるでしょう。 【次ページ】工期基準と労務費転嫁の「新たなガイドライン」とは

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