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- 2024/04/22 掲載
偽装一人親方問題とは何か、なぜ起きる?2024年問題が「追い打ち」になるワケ
連載:現場の声から読み解く建築業界のリアル
国交省も対策に乗り出した「偽装一人親方問題」
近年、「一人親方を雇用するべきかどうか」といった話を聞くようになりました。一人親方は個人事業主であるため、「雇用」というワードが出てくるのは不自然に感じますが、なぜそのような話が出てくるのでしょうか。そこでは、いわゆる「偽装一人親方問題」を大きく取り上げており、偽装一人親方の撲滅・是正に向けた「下請指導ガイドライン」の改訂作業などを行っています。偽装一人親方とは、実態上雇用契約にある従業員を、請負契約の一人親方として扱うことをいいます。
そして、下請指導ガイドラインとは、労働者性の強い一人親方が在籍している企業を現場入場させないように元請業者に求めるといったものになります。
この考えが広がることで、必然的に偽装一人親方を下請業者として選んでいる建設業者は、厳しい立場に立たされることになります。
なぜ?偽装一人親方が生まれてしまう背景とは
そもそも、この偽装一人親方が生まれる背景としては、厚生年金保険や雇用保険、健康保険など国の保険に加入しなくていいように、つまりは、雇用ではなく業務委託にすることで、企業がこれらの費用負担を逃れられるようにしているのです。しかし、偽装一人親方にさせられた人にとって、これは大きなデメリットとなります。たとえば、雇用保険に加入していれば、失業した際に国から給付を受けることができます。厚生年金保険に加入していれば、将来、受け取れる年金額が増えます。このようなメリットを享受できなくなってしまうのが、一人親方なのです。
さらに、この現状に拍車をかけているのが2023年10月から施行された「インボイス制度」です。一人親方の多くは、免税事業者のため、今後、免税事業者の一人親方と取引をしていると、消費税について企業側が多く負担しなければならなくなるため、取引を継続するのか選択を迫られることになります。
これまで、意図して偽装一人親方にさせていた企業の場合、国の保険に未加入にしていることで費用を浮かせていましたが、インボイス制度による消費税負担増があることで、そのメリットも享受できなくなります。
これらのバランスをどう取るか、ということを今後検討しなければならない企業増えるでしょう。それと同時に、一人親方として偽装させている企業側はすでに違法な働き方を強いていることを認識しなければなりません。 【次ページ】「建設の2024年問題」が追い打ちとなる事態に…
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