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- 2020/12/15 掲載
フィンテック識者のネタ元は? なぜ「リサーチ」が不可欠なのか
識者達が活用しているフィンテックの情報リソース
したがって、常にリサーチして、綱がどこにあるか、引っぱることができる綱はどれか、みんなはどの方向を向いているのか、引くチャンスはあるのか……などを、日々模索しています。
みずほ証券 小川 久範氏(以下、小川氏):15年間、スタートアップの分析をしていますが、その目的は時代とともに変わっています。当初はIPOのための分析、リーマンショック後は買収対象になれるかどうかの分析、フィンテック黎明期は業界分析、そして最近は上場スタートアップがとても多いので、企業価値を投資家に理解してもらうための分析が主になっています。
KPMGと慶應義塾大学FinTEKセンターが共同でまとめた『FinTech Initiative 2030』は、日本の大手企業におけるフィンテック対応についての調査報告書です。まだまだ取り組みが足りないところもありますが、日本企業にフィンテックが定着してきたことを示しています。
auFH 藤井 達人氏(以下、藤井氏):新しい情報を仕入れるためにツイッターや「デジタル・バンク」を執筆したクリス・スキナー氏のブログなどをRSSにエントリーして見ています。
フィンテックに強いWebメディアとしては、Bank Innovationがあります。年間200ドルほどの有料英文メディアですが、金融機関とフィンテックに関する情報が毎日1、2本ずつアップされて、1本の記事の文量もちょうどよく、読みやすいと思います。
また、FinTech Futuresは、毎日更新される無料の英文サイトです。月1回PDFにまとめて情報提供してくれるので、一覧性があって読みやすいですね。
Citi Global Perspectives & Solutionsは、シティグループが提供している優良なメディアです。月1回、アナリストが世の中の動き、課題をピックアップしてレポートしています。フィンテックやファイナンスに関する記事は年に3、4本ですが、内容が濃くておすすめです。また、アジアのフィンテックの動きにも注目しているので、FinTech Singaporeも読んでいます。
フィンテックに関する情報はあふれているので、定点観測するメディアを決めておくといいでしょう。情報収集はほぼ毎日です。日本経済新聞、きんざいオンラインを読んでから、RSSで興味のあるサイトを登録し、通勤時間などに興味のある記事だけ読んでいます。現在はコロナ禍で通勤も減りましたが、在宅のすきま時間に効率よく情報収集しています。読み切れないものはPocketアプリに入れ、後で読むようにしています。
上原氏:ツイッターやフェイスブックから情報取集しています。読んだ本の感想はnoteで発信し、ツイッターとも連動させています。また、SNSを利用して興味を持ってくれた人たちと交流しています。
直近では、World Economic Forumが発行した「Forging New Pathways: The next evolution of innovation in Financial Services」が面白かったですね。AI、量子コンピュータ、AR/VR、IoT、クラウドコンピューティング、Task-Specific Hardware(物理的な装置や機器の追加により性能を向するハードウェア・アクセラレーション)、5G、DLT(分散型台帳技術)という8つの新しい技術が金融をどう変えていくか、というレポートで、かなり先を見ています。
2019年まではAR/VRが金融に影響を与えることなどまったく考えられませんでしたが、コロナ禍で対面コミュニケーションができない現在、AR/VRには新しい可能性が見えてきたと感じます。
オープンバンキング、DeFiなど識者注目のトレンドは?
藤井氏:数年前からフィンテックの定義が広がっています。すべての産業に金融機能が組み込まれるようになったからです。したがって、産業ごとのトレンドと掛け合わせて、フィンテックの流れを読み解かなければなりません。また、テンセントの子会社であるインシュアテックの「WeSure」は、WeChatなどのプラットフォームを通じて集まるデータを分析するのみで、保険契約の際、引き受けの可否を判断する「アンダーライティング」について大手保険会社に託しています。このようにテック企業が金融機関と競合するのではなく、自分たちの得意な分野で金融機関と連携する動きに注目しています。
さらに注目しているのが「分散型金融(DeFi)」です。ブロックチェーンは幻滅期から普及期に入りつつあります。そのトレンドを考えると、ブロックチェーンが金融のメインストリームに来ると感じています。
上原氏:当社Symphonyが金融機関のコミュニケーションを扱っているから、というわけではありませんが、BtoBフィンテックには関心があります。当初、フィンテックというと、BtoCの送金、決済などでしたが、今、トレジャリーAPIなどBtoBフィンテックが注目されています。
ただ、この分野の取り組みはまだこれからです。今回のコロナ禍で分かったのは、BtoBが対象とする金融機関における業務処理が分散されたとき、効率を上げるのが難しいということです。
たとえば、貿易金融においては、金融だけでなく、商社、国内外の輸出者、輸入者の中で、どうやってデータが効率よく流れていくか注目しています。BtoBのフィンテックで金融と企業がつながり、その先の消費者までどうやってつながっていくかに、注目しています。
柴田 誠氏(以下、柴田氏):なるほど、コロナ禍が、今まで見過ごしていた部分を顕在化し、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を加速する1つのきっかけとなった印象もありますね。
【次ページ】リサーチするとき注意していることと、リサーチの重要性
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