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  • 2020/12/15 掲載

フィンテック識者のネタ元は? なぜ「リサーチ」が不可欠なのか

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「フィンテック」が注目されてしばらく経つが、最近は新規参入者も次々に登場し、その範囲も広がっている。さらに、コロナ禍によってデジタル化の重要性があらためて認識され、金融ビジネスにはさまざまな変化への機動的な対応が求められている。それには、変化を的確に把握し、対応方法を考えるための情報収集「リサーチ」が重要になる。では、日本のフィンテックをけん引する識者達は、どのようにリサーチしているのだろうか。そのノウハウや具体的な情報リソースを、auフィナンシャルホールディングス 藤井 達人氏、みずほ証券 小川 久範氏、Symphony 上原 玄之氏、FINOLAB 柴田 誠氏が明らかにした(肩書は取材時のもの)。
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(写真左から)上原玄之氏(Symphony)、小川久範氏(みずほ証券)、藤井達人氏(auフィナンシャルホールディングス)、柴田誠氏(FINOLAB)
※本稿は、11月26日に開催されたFINOLAB RESEARCH設立記念「フィンテックリサーチのすゝめ」での説明とパネルディスカッション(モデレータ:柴田氏)を再構成した。登壇者の所属先は開催時点。


識者達が活用しているフィンテックの情報リソース

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Symphony
アジアパシフィック地域戦略・企画担当
上原 玄之 氏
Symphony 上原玄之氏(以下、上原氏):金融コミュニティで何かを動かすことは、壮大な綱引きのようなものです。スタープレーヤー1人だけで引っ張ることはできませんし、全員が同じ方向を見ていないと綱は引けません。

 したがって、常にリサーチして、綱がどこにあるか、引っぱることができる綱はどれか、みんなはどの方向を向いているのか、引くチャンスはあるのか……などを、日々模索しています。



みずほ証券 小川 久範氏(以下、小川氏):15年間、スタートアップの分析をしていますが、その目的は時代とともに変わっています。当初はIPOのための分析、リーマンショック後は買収対象になれるかどうかの分析、フィンテック黎明期は業界分析、そして最近は上場スタートアップがとても多いので、企業価値を投資家に理解してもらうための分析が主になっています。

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みずほ証券
法人グループ 法人営業推進部
戦略調査室 ディレクター
小川 久範 氏
 書籍としては、『フィンテックエンジニア養成読本』がエンジニア向けに書かれていてとてもいいと思います。エンジニアにとってフィンテックが当たり前になったと感じられる1冊です。

 KPMGと慶應義塾大学FinTEKセンターが共同でまとめた『FinTech Initiative 2030』は、日本の大手企業におけるフィンテック対応についての調査報告書です。まだまだ取り組みが足りないところもありますが、日本企業にフィンテックが定着してきたことを示しています。

auFH 藤井 達人氏(以下、藤井氏):新しい情報を仕入れるためにツイッターや「デジタル・バンク」を執筆したクリス・スキナー氏のブログなどをRSSにエントリーして見ています。

 フィンテックに強いWebメディアとしては、Bank Innovationがあります。年間200ドルほどの有料英文メディアですが、金融機関とフィンテックに関する情報が毎日1、2本ずつアップされて、1本の記事の文量もちょうどよく、読みやすいと思います。

 また、FinTech Futuresは、毎日更新される無料の英文サイトです。月1回PDFにまとめて情報提供してくれるので、一覧性があって読みやすいですね。

 Citi Global Perspectives & Solutionsは、シティグループが提供している優良なメディアです。月1回、アナリストが世の中の動き、課題をピックアップしてレポートしています。フィンテックやファイナンスに関する記事は年に3、4本ですが、内容が濃くておすすめです。また、アジアのフィンテックの動きにも注目しているので、FinTech Singaporeも読んでいます。

 フィンテックに関する情報はあふれているので、定点観測するメディアを決めておくといいでしょう。情報収集はほぼ毎日です。日本経済新聞、きんざいオンラインを読んでから、RSSで興味のあるサイトを登録し、通勤時間などに興味のある記事だけ読んでいます。現在はコロナ禍で通勤も減りましたが、在宅のすきま時間に効率よく情報収集しています。読み切れないものはPocketアプリに入れ、後で読むようにしています。

上原氏:ツイッターやフェイスブックから情報取集しています。読んだ本の感想はnoteで発信し、ツイッターとも連動させています。また、SNSを利用して興味を持ってくれた人たちと交流しています。

 直近では、World Economic Forumが発行した「Forging New Pathways: The next evolution of innovation in Financial Services」が面白かったですね。AI、量子コンピュータ、AR/VR、IoT、クラウドコンピューティング、Task-Specific Hardware(物理的な装置や機器の追加により性能を向するハードウェア・アクセラレーション)、5G、DLT(分散型台帳技術)という8つの新しい技術が金融をどう変えていくか、というレポートで、かなり先を見ています。

 2019年まではAR/VRが金融に影響を与えることなどまったく考えられませんでしたが、コロナ禍で対面コミュニケーションができない現在、AR/VRには新しい可能性が見えてきたと感じます。


オープンバンキング、DeFiなど識者注目のトレンドは?

藤井氏:数年前からフィンテックの定義が広がっています。すべての産業に金融機能が組み込まれるようになったからです。したがって、産業ごとのトレンドと掛け合わせて、フィンテックの流れを読み解かなければなりません。

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auフィナンシャルホールディングス
執行役員
最高デジタル責任者
兼 Fintech企画部長
FINOVATORS CO-FOUNDER
藤井 達人 氏
 金融領域で注目しているのは、1つはオープンバンキングです。コロナ禍でオープンAPIが注目されていますが、特にBtoBで資金効率を上げるためのトレジャリーバンキング(商業銀行)とAPIに注目しています。また、「テック企業と金融機関の本格的な連携」からも目が離せません。グーグルがシティグループなどの金融機関と連携し、銀行口座サービスを提供することが発表されたのも記憶に新しいでしょう。

 また、テンセントの子会社であるインシュアテックの「WeSure」は、WeChatなどのプラットフォームを通じて集まるデータを分析するのみで、保険契約の際、引き受けの可否を判断する「アンダーライティング」について大手保険会社に託しています。このようにテック企業が金融機関と競合するのではなく、自分たちの得意な分野で金融機関と連携する動きに注目しています。

 さらに注目しているのが「分散型金融(DeFi)」です。ブロックチェーンは幻滅期から普及期に入りつつあります。そのトレンドを考えると、ブロックチェーンが金融のメインストリームに来ると感じています。

上原氏:当社Symphonyが金融機関のコミュニケーションを扱っているから、というわけではありませんが、BtoBフィンテックには関心があります。当初、フィンテックというと、BtoCの送金、決済などでしたが、今、トレジャリーAPIなどBtoBフィンテックが注目されています。

 ただ、この分野の取り組みはまだこれからです。今回のコロナ禍で分かったのは、BtoBが対象とする金融機関における業務処理が分散されたとき、効率を上げるのが難しいということです。

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Head of FINOLAB
FINOVATORS CO-FOUNDER
柴田 誠 氏
 そこで面白いと思っているのが、金融の「情報の工場化」です。日本の場合、下流のバックオフィスにおけるマニュアル作業が多いのですが、その理由の1つは、個人の技術が優れていて、マニュアル作業を職人的にこなせる人が多いことがあります。そこで下流のバックオフィスが効率よく情報を処理できるように、フィンテックを活用して、上流のフロントオフィスからデータを流すデジタルフローが必要になります。

 たとえば、貿易金融においては、金融だけでなく、商社、国内外の輸出者、輸入者の中で、どうやってデータが効率よく流れていくか注目しています。BtoBのフィンテックで金融と企業がつながり、その先の消費者までどうやってつながっていくかに、注目しています。

柴田 誠氏(以下、柴田氏):なるほど、コロナ禍が、今まで見過ごしていた部分を顕在化し、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を加速する1つのきっかけとなった印象もありますね。

【次ページ】リサーチするとき注意していることと、リサーチの重要性
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