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【防衛費の増額・社会保障制度の維持】財源はどうなる?
総選挙後の政府がどうしても対処しなければならない問題は、防衛費増額のための増税だ。この問題の基本は、すでに岸田内閣によって決定されている。岸田内閣は防衛費を増額することとしたが、その財源は増税によることとし、国債の発行には頼らないこととした。
そして、防衛力強化基金を設立したが、増税の具体的な内容は、これから決めることになる。これについての議論が野党の側からまったく提示されていないのは、どういうわけだろうか?
さらに、日本がこれから長期的に対応しなければならない問題として、社会保障制度を維持するための財源の問題がある。
社会保障制度は、社会保険料と税によって賄われている。大雑把に言えば、社会保障の受益者は、年金をはじめ、医療保険、介護保険でも、高齢者が中心だ。そして、保険料や税の負担をするのは、主として労働年齢階級の人々だ。
ところが高齢化が進むことにより、高齢者の比率と労働年齢階級の人口の比率は大きく変わる。したがって、仮に高齢者1人当たりの社会保障給付を現状どおりとすれば、労働年齢階級の人々の1人当たり負担は著しく増加することになる。
このような負担増はとても不可能と考えられるので、さまざまな対策が必要になる。第一は社会保障給付の減額だ。年金の場合には、「マクロ経済スライド」という制度が導入されており、年金額を一定の比率で減額していくこととなっている。しかし現実には、それを発動するための要件である物価上昇率が高まらなかったため、これまでほとんど発動されてこなかった。
医療保険や介護保険については、受益者の自己負担を増額することがすでに行われており、これからも行われる可能性がある。
年金制度について言えば、2023年公表された財政検証で、すでに問題が指摘されている。第一は、国民年金の所得代替率が今後低下する可能性があることだ。これを解決するために、基礎年金の比率を増大することが考えられるが、そのためには国庫負担を増大させなければならず、そのための財源問題が生じる。
こうした問題について、現状では、国民が意見を反映させるルートがない。総選挙においてこそ、こうした問題が議論の対象とされるべきだ。
【全世代型社会保障】高齢者負担を上げ続けるべきか?
これまでの社会保険制度では、前述のように負担が主として、労働年齢階級の人口が負うことになっていたが、高齢者の負担を引き上げていくという方向転換が行われている。これが、「全世代型社会保障」と呼ばれる考えだ。
この方針に基づき、医療保険における現役並み保険料負担者の範囲拡大や、介護保険料の増額が行われている。また自己負担の引き上げも行われている。
このような方向を是として、さらに進めるべきか? あるいは望ましくないと考えるべきか?
これについては、日本維新の会が高齢者の医療費窓口負担を原則的に3割に引き上げることを公約にしている。他党も政策の方向を明示すべきだろう。
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