- 会員限定
- 2024/06/03 掲載
なぜ「異常な円安」が続くのか? 原因は日米金利差? そんな“簡単ではない”深刻問題
連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質
たった数年で「急速に貧しくなった」
これが日本に深刻な問題をもたらしたことは間違いない。輸入物価の高騰により、国内物価が高騰した。日本人の購買力が著しく減少し、海外の高価なものを買えなくなった。そして、留学できない、外国からの労働者が日本に来ない、などの問題が発生している。日本は急速に貧しくなったのだ。
一体なぜこのようなことが起きたのか? その原因は何か? ここから抜け出すにはどうすれば良いのか? それとも、これは一時的な現象に過ぎないので、あまり深刻に考える必要はないのか?
日銀の金融緩和が円安を招いた
円安の原因は日米間の金利差だ。2022年春から円安が進んだのは、米国が政策金利を急速に引き上げ、日本が追随しなかったので、日米間の金利差が拡大したためだと説明される。たしかにそのとおりである。この説明は正しい。ただし、これだけでは不十分だ。
金利差が円安をもたらすのは、「円キャリー」と呼ばれる取引による。これは投資資金を円で借りて調達し、それをドル資産に投資する取引だ。これによって金利差分だけの利益を得られる。
ただし、将来時点で円高が進めば、円資金を返却するときに損失が発生する。したがって、利益を得られるためには、将来円高にならないことが必要だ。
日本銀行は、2022年12月まで金融緩和策を見直す予定はないと明言していた。また2023年4月から総裁が交代して金融政策の正常化に取り組むとしたが、当面は金融緩和を継続するとした。これは、円キャリー取引の利益を保証したようなものだ。このために、円キャリー取引を誘発し、円安が進んだのだ。
日米金利差によって円安が生じ、そして円安が問題をもたらしているのであれば、「日銀が金利を上げることによってそれに対処する」のは、当然、必要とされることのように思われる。
しかし、問題はそれほど簡単ではない。 【次ページ】円安の原因は「金利差」以外にあるのか?
関連コンテンツ
PR
PR
PR