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  • 2024/02/28 掲載

【NRI調査】デジタルアセット投資家の「意外過ぎる」金銭的リターンより重視するもの

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2023年12月、大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)にてデジタル証券の二次流通市場「START」がオープンした。2024年からは不動産・インフラや嗜好品・コンテンツなど幅広いオルタナティブ資産が次々とデジタル証券化されるだろう。デジタルアセットに関心を持つ投資家は従来とどのように異なるのか。そして資産市場にどのような影響を及ぼすのか。野村総合研究所 未来創発センター デジタルアセット研究室長が解説する。
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「デジタルアセット投資家」が何に対して投資したいのか?(後ほど詳しく解説します)

「補完金融の台頭」と「デジタルアセット投資家」

 前回までは、従来の資金調達手法を補完するオルタナティブ・ファイナンス(補完金融)の潮流を解説した。ブロックチェーンなどのデジタル技術を積極的に活用することで、さまざまな資産がデジタル証券化され、新たなデジタルアセット市場が登場しつつある。

 デジタルアセットに関心を持つ投資家は、従来までの伝統的な投資家像とは大きく異なることも分かってきた。株式や投資信託などの伝統的な金融資産の投資家と比べると、その世代も若く、デジタルサービスを積極的に活用し、YouTubeやSNSなどで金融・経済に関する情報を得ながら、新しい金融商品への投資を検討しているのである。


 野村総合研究所は2023年6月に「デジタルアセットに関する調査」として、日本全国に居住する金融商品に興味がある20~60代の男女を対象としてインターネットアンケート調査を実施した。引き続きこの調査に基づき、このようなデジタルアセットへ関心がある投資家層の投資における考え方や選好などについて深掘りする。その上で、インパクト投資との融合による「新たな投資フロンティア」の可能性について紹介したい。

「既知のものや社会に良いものに投資」する層

 まず、本調査では、「デジタルアセット関心層」を少なくとも1つのデジタルアセットに対して「非常に興味がある」「やや興味がある」と回答した人と定義している。ここでは、そのデジタルアセット関心層と、逆にデジタルアセットには興味がない無関心層の違いをみてみよう。

 以下は、投資における考え方の特徴について聞いたものである。

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デジタルアセットに関心を持つ投資家層が投資してみたい資産
(出典:野村総合研究所「デジタルアセットに関する調査」(2023年6月))

 ここからデジタルアセット関心層の特徴として、投資対象に対する共感性や社会性を重視し、企業や地域への貢献意欲を有していることが分かる。また、利回りよりも良く知っているものを好み、優待やクーポンなどの非金銭的リターンを重視する傾向を捉えることができる。

 そのため、もちろん金銭的なリターンが重要ではあるものの、いわゆるインパクト投資やESG投資などと同じように、デジタルアセット関心層は「志ある投資家」とも呼べるのではないだろうか。身近で良く知っているものや社会や地域に貢献できるような資産に対して、その「志ある資金」を一部で投じたいと考えているとも言えるだろう。

 また、デジタルアセット関心層における投資に対する考え方として、「投資先の手触り感や社会や環境に対するインパクトを重視したい」という考えも注目すべきだろう。「投資信託」「不動産投資信託(J-REIT)」など、複数の資産を扱うポートフォリオへの投資では、“手触り感”を感じることはない。あくまでリスクとリターンという金銭的な数値面から投資収益を評価することとなる。

 しかし、個別資産へ投資する場合は、投資先の“手触り感”はもちろん「社会や環境に対するインパクト」を個別に感じることが可能である。そのような社会的リターンに関する情報について、慎重に分析した上で判断したいという投資スタンスとも言えるのではないだろうか。

 したがって、特定の個別資産を対象としたデジタルアセットは、投資先に関する徹底した情報開示が求められる上、その「手触り感」や「インパクト」を投資家に対してどのように感じてもらうのか、投資家との直接接触(ダイレクト・コミュニケーション)の高度化が必要となるだろう。

 そこではコミュニティやサービスの利用権や機能を有する「ユーティリティトークン(Utility Token:UT)」や「NFT(非代替性トークン)」などのデジタル優待サービスを付帯することで、さらに共感性を高めることも可能であり、単なる金銭的なリターンだけではなく、社会的リターンも含めた商品組成が求められるだろう。

 なお、本稿ではビットコインなどの暗号資産へ関心を有する投資家もデジタルアセット関心層として捉えている。上記のような傾向は、暗号資産へ関心を有する投資家層(クリプト関心層)とデジタル証券などのトークンに関心を有する投資家層(トークン関心層)では大きく異なることも分かっている。

 ここではその違いまでは詳細に紹介しないが、トークン関心層については、日々の値動きに左右されずに長期的な運用を好み、利回りが低くても良く知っているものに投資し、その投資を通じて地域のために貢献したいという考えが強く示されている。

 しかし、クリプト関心層においては、それらとは逆の結果となり、短期的な運用や利回りの高さを求める傾向がみられることには留意したい。 【次ページ】デジタルアセット関心層が投資したい資産と地域
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