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- 2023/11/10 掲載
令和の「デジタルアセット」とは? 分散型台帳技術で運用されないとダメなワケ
分散型台帳技術で再定義「デジタルアセット」とは何か
本連載の第1回では、従来の資金調達手法を補完するオルタナティブ・ファイナンス(補完金融)の概要や市場動向、仕組みなどについて紹介した。これは従来の資本市場を大きく拡張させる可能性を秘めており、新たな金融イノベーションがここから生まれるかもしれないと期待が高まっている。そして第2回では、1990年代から概ね10年毎に大きなイノベーションが起きている不動産投資市場を題材に、金融技術と情報技術を活用したオルタナティブ・ファイナンスの進展について振り返った。特に2020年代初頭の現在、4段階目のイノベーションとして不動産デジタル商品とも呼べる新たな「デジタルアセット」が登場していることを紹介した。
第3回となる今回は、近年盛んに使われ始めた「デジタルアセット」という概念に関して、その定義や特徴、現在の動向などについて紹介する。
そもそもデジタルアセットとは最近になって登場したような新しい言葉ではなく、以前から「資産として価値を有するデジタルデータ」という意味で用いられていた。その名のとおり、画像やビデオ、音楽、電子書籍などのコンテンツや電子的なファイルをデジタルアセットと呼んでおり、これらをいかに管理していくかということが今から20年以上前も盛んに議論されていた。
しかし、現在のデジタルアセットは、近年のブロックチェーン技術の発展に伴って異なる定義を有するようになりつつある。分散型台帳、およびその代表的な技術であるブロックチェーン技術とは、簡単に言えば情報通信ネットワーク上にある端末同士を直接接続し、暗号技術を用いて、取引記録を分散的に処理・記録するデータベースの一種であり、ビットコインなどの暗号資産に用いられている基盤技術である。
この分散型台帳技術の登場と発展に伴い、デジタルアセットの概念も支払手段や権利・価値の表象、移転、利用など、多様な目的に応じた幅広い概念へと定義が広がってきているのである。
実際に米国の連邦税に関する執行、徴収を司る内国歳入庁(IRS)では、デジタルアセットの定義を「暗号的に保護された分散型台帳に記録されたデジタルな価値の表象」としており、分散型台帳の登場を前提としてデジタルアセットの捉え方が大きく変わりつつある。
その結果として、現在のデジタルアセットという言葉は、分散型台帳の1つであるブロックチェーン技術を用いた暗号資産や各種トークンなどの金融資産的な側面を持つようになってきているのである。
デジタル・アセット・ファイナンスの登場と進展
定義として「暗号的に保護された分散型台帳に記録されたデジタルな価値の表象」となった現在のデジタルアセットが対象とする領域の概念を、資産分類から再整理したのが以下の図である。横軸はアナログとデジタルで区分しているが、ここで言うデジタルとは分散型台帳に記録するか否かという観点から分類している。また縦軸は伝統的な金融資産なのか、実物資産などのオルタナティブ資産なのかという観点から分類している。
このように整理してみると、アセットのデジタル化に伴い、通貨などの伝統的金融資産の領域におけるデジタル化だけではなく、不動産・インフラや嗜好品・コンテンツなどの幅広いオルタナティブ資産がデジタル的に金融商品化する動き、つまり「デジタル証券化(Digital Securitization)」が生じていると捉えられる。
前回紹介したように、今までも不動産などのオルタナティブ資産を証券化する取り組みとして「アセット・ファイナンス(Asset Finance)」が積極的に推進されてきた。しかし、今後はブロックチェーンなどのデジタル技術を活用することで、「デジタル・アセット・ファイナンス(Digital Asset Finance)」とも呼べる新しい取り組みが一層進展していくだろう。 【次ページ】デジタルアセットが分散型台帳技術で運用されないとダメなワケ
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