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  • 2023/10/17 掲載

IT×規制改革で進化した「不動産ファンド4.0」、現在進行系の変革とは?

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従来の資金調達手法を代替する「オルタナティブ・ファイナンス」は、クラウドファンディングやデジタル証券化などへと広がりつつある。デジタル×アセット×ファイナンスの3つの融合という観点で、複線的な金融システムの構築や新しい資本市場の拡張とも呼べる可能性を秘める。これらの動きが顕著に見られるのが、技術革新と規制改革に伴って大きく変貌を遂げた不動産投資市場である。本稿では、情報技術を活用したデジタル証券などの登場により、変化し続ける不動産投資市場とその展望について野村総合研究所 未来創発センター デジタルアセット研究室が解説する。
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金融技術とITで進化した不動産投資市場を概観する
(Photo/Shutterstock.com)

技術革新と規制改革に伴って進化してきた資本市場

 第1回では、これまで伝統的な金融機関が提供してきた資金調達手法とは異なる「オルタナティブ・ファイナンス」の概要や市場動向、仕組みなどについて紹介した。

 銀行からの融資や株式・債券の発行といった従来の伝統的なファイナンス手段ではなく、個人投資家などから直接資金を調達する「クラウドファンディング」などの代替的な資金調達の仕組みが拡大している。このようなオルタナティブ・ファイナンスの進展は、従来の資本市場を大きく拡張させる可能性を秘めており、新たな金融イノベーションがここから生まれるかもしれない。

 翻って資本市場におけるイノベーションの歴史を振り返ってみると、数々のイノベーションのきっかけは必ずしも技術革新だけによるものではないことに気付く。今でこそ人工知能(AI)やブロックチェーン技術が注目を浴びているが、資本市場におけるイノベーションは情報技術の革新だけではなく、金融技術の革新や金融規制改革に伴って生じてきたと言えるだろう。

 これはオルタナティブ・ファイナンスの進展においても同様である。クラウドファンディングやセキュリティ・トークン(デジタル証券)の登場が良い例だが、金融及び情報面での技術革新と同時に規制改革が伴うことが、大きなイノベーションへつながっている。

 オルタナティブ・ファイナンスの進展は、「アセット側」「投資家側」でとらえ方が異なる点にも注目したい。

 資金調達を必要とするアセット側の観点では、オルタナティブ・ファイナンスにより複線的な金融システムが構築され、レジリエント(回復力・適応力が高い状態)で効率的な市場が整備されることが期待できる。機関投資家や個人投資家などの投資家側の立場からは、オルタナティブ・ファイナンスを「資本市場にアクセスする新たな手段の登場」と捉えることが可能だ。

 実際、このような技術革新と規制改革に伴って大きく変化してきた市場に不動産投資市場がある。ここからは不動産投資市場を題材に、オルタナティブ・ファイナンスの進展について見てみよう。

証券化という「金融技術」により変革した不動産投資市場

 従来、不動産への投資と言えば、ワンルームマンションやアパートなどの現物不動産に投資をして、いわゆる「大家さん」としてその不動産の賃貸経営をすることが一般的だった。不動産は昔から「財産三分法」の一角を占め、資産運用における重要なアセットクラスである。しかし、詐欺まがいの儲け話が多いのも事実であり、不動産投資と聞くと怪しいイメージを持つ人も多いだろう。

 ここで、不動産投資の利点と留意点について冷静に考えてみたい。以下の図は、不動産投資における利点と留意点、そして「証券化」という金融技術によって、どのように留意点が改善されてきたのかを図示したものである。

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現物不動産と不動産証券化商品への投資の違い
(出所:筆者作成)

 まず、不動産投資の利点は、家賃という相対的に高く、安定的なリターンを享受でき、株式などの金融市場からの影響が少なく、インフレ率と連動したリターンを得られる点にある。

 実際の不動産投資には当然、特有の留意点もある。不動産の運営・管理には専門的なスキルが必要であり、売ろうと思ってもすぐには売れず、現金化にはそれなりの時間を要することになる。また、投資するには多額の資金が必要であり、複数の現物不動産に幅広く分散投資することは容易ではない。

 そこで日本では1990年代後半以降、こうした留意点を緩和した投資商品として、「証券化」という金融技術を活用し、さまざまな不動産証券化商品が登場してきた。アセット・ファイナンスにおける金融技術の革新は、規制改革の進展と伴って過去30年かけて無数のイノベーションを起こしてきたのである。 【次ページ】デジタル化により4段階目の進化「不動産ファンド4.0」とは?
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