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2023年は世界中の金融機関にとって激震の年であり、結果としてレジリエンス(復元力)に格段の向上がみられました。2024年は生成AIの活用をドライバーとして各種金融機関が大きな変革へと踏み出す年となるでしょう。データへの関心と造詣、リスクの受容と評価・管理、ガバナンスが高レベルに達している金融機関は、生成AIをはじめとするデータ活用を取り入れており、業務やシステムに組み込んで成果を実現していくための準備がすでに整っているのです。本稿では、2024年をデータとAIによる大きな変革の年としたい金融機関に向け、4つのポイントを紹介します。
執筆:Dataiku ソフィー・ディオネ、監修:金融データ活用推進協会代表 岡田 拓郎
執筆:Dataiku ソフィー・ディオネ、監修:金融データ活用推進協会代表 岡田 拓郎
2024年の「データとAI」を占うには
2008年の金融危機後の規制強化を機に、金融サービスにおけるITシステムはこの15年間で大きく変化しました。どの銀行も、健全性確保のための規制の強化や各種サービスのデジタル化、
オペレーショナルレジリエンスに対する監視などを戦略的優先事項として取り組んできました。
金融機関はこの変化の時代を乗り切り、これまでになく変容する顧客行動に合わせてシステムや業務プロセスを更改し、新たな規制に対応してきています。2023年はその成果として、金融業界おけるレジリエンスが格段に向上したと言えるでしょう。
欧州のクレディ・スイスが経営危機に陥り、
SVB(シリコンバレー銀行)の破綻で米国の金融業界における中堅市場には激震が走りました。そして物価は異常なまでに高騰しています。いまだその余波で経済的な危機へと陥る不安定な状態にあります。この間に強化を遂げた金融機関もあれば、不安定さを増した金融機関もあります。しかし、金融システムは依然として安定しており、新たなレベルに達していると言えます。
では、今後についてはどうでしょうか。この現状が新しいスタンダードとなるのか、あるいは、金融機関が取り組むべき変革のドライバーが存在するのでしょうか。
ここでは2024年をデータによる大きな変革の年にしたい金融機関のために、以下の4つのポイントを紹介します。
ポイント(1)データによる変革実現の手段はすぐ目の前に
多くの金融機関は、データによる変革を実現するために十分な準備が整っていないと考えています。たとえば以下のようなことです。
「データは十分にクリーンで整備されているか」「人材は育成されているか」「ガバナンスシステムは導入されているか」「まずはクラウドに完全移行すべきか」「データへのアクセスは一部の人に制限すべきか、あるいは皆に開放すべきか」「優先順位をどのように定義すべきか」「ROIをどのように計算するか」「アナリティクスやAIを使ったさまざまアプローチをどのように評価すべきか」などです。
上記に挙げたようなことはすべて、データチームが今まさに取り組んでいる一般的な課題です。そして、取り組みを続けることでしか対処はできません。一歩引いて考えてみると、データを真の変革のドライバーとするために、銀行やその他の金融機関はすでに類まれな力を備えているのです。金融機関におけるデータへの造詣と管理レベルは総じて非常に高く、プロセス全体における正確さが求められることから、データへの強い関心がもともとありました。
意思決定やリスクのモデル化、実現可能性の評価などのために日々データを扱う従業員の割合は最も高いと言えます。また、銀行はシステム構築とモデルのガバナンスについて経験値が高く、関連リスクに取り組むために適切な枠組みを導入するには、特に有利な状況にあります。
全体として、いずれの銀行もさらなるデータ活用を進めるためにすでに十分な準備ができているのです。その中でも一部の銀行はさらに先に進んでおり、率先してアクションを取ろうという銀行もあります。ここで重要なのは「準備が完全に整うのを待つことは得策ではない」ということです。
すなわち、「データによる変革」を実現するためには、データが実際に使えるように行動を起こすこと、それに伴うリスクを受容することが必要となります。そしてこれが、データカルチャーを構築するために唯一有効なスタートポイントなのです。データへの取り組みを体系化するために多くのハードルを設けてしまった企業は、むしろ後れをとるリスクを負うことになります。さらに、この変革の実現に前向きな優秀な人材を失うリスクもあります。
【次ページ】残りのポイント3つと「AIとデータを使いこなす金融機関」の共通理念
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