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ビッグモーターに続きネクステージにも同様の自動車保険を利用した不正があるという報道から、両社の社長が辞任する事態になっている。金融庁がビッグモーターと損保ジャパンの両社に立入検査を実施するなど「損害保険と自動車」の関係は相当に根深いことが明らかになりつつある。本稿では「損害保険と自動車」の業界構造を解説しつつ、“健全なビジネス”が可能かを考察する。
「ビッグモーターだけの問題」か?
中古車の買取や販売のみならず自動車修理と保険の代理店業務を担うビッグモーター。同社が保険会社に対し、「実際には存在しない修理対応についての請求」「修理不要箇所への修理実施と請求」「車両を故意に損傷させて修理を実施して請求」といった不正請求をくり返していたことが
判明している。
保険会社は不正請求をされた立場であるが、ビッグモーターから中古車販売時に保険契約を斡旋してもらえる協力関係にあり、収益は上げられる仕組みが
できていた。
特に損保ジャパンは2022年に「ビッグモーター社による不正請求の疑義が損保各社に対して提起された」際、外部調査をいち早く切り上げて紹介を再開させているほか、「ビッグモーター向け保険で3~4割のシェアを獲得」「数十人の出向者を同社に派遣」など、「不正があっても黙認する関係にあった疑義がある。
ネクステージも同様の自動車保険を利用した不正により、社長が辞任してしまったように、事態は1社にとどまるものではない。本稿では「自動車業と損害保険」の業界構造を解説しつつ、“健全なビジネス”が可能かを考察する。
「損害保険と自動車」の構造とは?
国内の損害保険業界の市場規模を示す「正味収入保険料」は、2021年度8兆8,063億円、このうち48%の4兆2,288億円が自動車関連であり、「強制加入」の自賠責も含めるとその割合は56.8%になる。損保会社の売上のメインは、自動車関連という認識で差し支えない。
損害保険の中心である自動車保険には、先述の自賠責保険をカバーする保険の位置付けで、販売代理店が保険会社と顧客の仲介を担う「代理店型」、保険会社と顧客が直接やりとりする「ダイレクト型」がある。
2021年の調査では、「代理店型」が91%、「ダイレクト型」は9%にとどまる。諸外国と比較した場合、日本のダイレクト型のシェアは低い。たとえば英国では自動車保険のシェアの約6割がダイレクト型という
調査もある。
ダイレクト型と代理店型は「収益性」に大きな違い
ダイレクト型保険は1割未満とシェアは低いものの、この10年で
138%伸長している。ダイレクト型が伸びる大きな理由は値段の低さにある。
保険の比較サイトでは「ダイレクト型保険で約2万7000円~3万円3000円程度、損保ジャパンなど代理店型保険では、5万8000~6万6000円程度だった(車種プリウス、30~40歳の場合:ドコモ・インシュアランス、簡易見積もり)。保険料は総額で示され、当然ながら手数料は明かされていない。
一方、圧倒的にもうかるのは、「代理店型」という。損害保険業に携わるA氏は、両者のビジネスについて以下の見解を示す。
「新車で加入する際、自動車保険の代理店型、ダイレクト型ともに手数料は5~20%といわれていますが、両者の扱う正味収入保険料には大きな差があります。この差を生むのがそもそもの保険の価格が数万円違う点と、1年ごとの「保険の更新」の際の手数料収入です。代理店型の場合、更新時にも保険会社から最初の契約時と同様の手数料が入る契約になっていることが多い。一方、ダイレクト型はこの更新時の契約手数料率を2~3%に設定していることが普通です。代理店型の方が保険を継続すればするほど金額が大きくなるため、明らかに手数料を稼げる仕組みです」(A氏)
【次ページ】一般ドライバーを食い物にする「損保×自動車」の構造とは?
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