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- 2023/08/22 掲載
ビッグモーターら「不祥事続出」企業ガバナンス、内部監査や人材育成はどうすべきか?
前編はこちら(この記事は後編です)
経営陣に助言できる内部監査に求められるスキルとは?
「内部監査において求められるスキルは多様化していますが、従来の内部監査に求められていたオーソドックスなスキルは、変わらず必要です。内部監査の仕事は予備調査をし、往査を実施して、監査調書・監査報告書を取りまとめることです。予備調査の段階では、リスクを嗅ぎ分ける嗅覚も必要です。企画力や計画力も求められるでしょう。また、部店に入った時には、観察する力や傾聴して的を射た質問する質問力、タイムマネジメント力も必須です」(渡邊氏)
タイムマネジメント力が求められるのは、長時間かけた内部監査になると、内部監査に入られた部署の通常業務に支障が出ると考える傾向があるためだ。監査調書や監査報告書をまとめる段階でも、さまざまなスキルが要求される。
監査調書や監査報告書をまとめる際には、改善提案力・文章力・説明力が必要になるだろう。中でも昨今、特に重要なのは「説明力」だ。
「内部監査が経営陣に対して助言・提言をするためには、客観的に材料を揃えて現状を適切に分析し、その結果をベースに説得力のある説明を行うスキルが求められるでしょう。また、アンテナの方向性を広げることも必要です。経営が何を考えているのか、サステナブル経営の旬のテーマとは何か、幅広い情報収集力が求められます。経営に資する内部監査のためには、経営と同等のアンテナが必要です」(渡邊氏)
1人ではなくチームで機能する新しい内部監査のあり方
内部監査人に求められるスキルは、実にさまざまだ。内部監査人の育成も容易ではない。しかし、工夫する余地はあると渡邊氏は語る。「知識力、情報収集力、分析力、経営陣へのプレゼン能力など、幅広い能力を備えているのは、スーパーマンではないかと思うかもしれません。内部監査人にメッセージとして伝えたいのは、すべての能力・スキルを1人で持たなくていいということです。スキルセットの発想で、『この人は財務に詳しい』『この人は環境問題に詳しい』というように、チームとして必要なスキルを揃えればいいでしょう」(渡邊氏)
もちろん、内部監査人の専門的な能力の向上は不可欠になってくる。専門的な知識の代表的なものをまとめたのが、下記の表である。
内部監査人に求められる専門知識を身につけるためには、IIA(内部監査人協会)が認定を行っている国際的な資格「CIA」の取得が有効とされている。CIAとは「Certified Internal Auditor」の略語で、日本では「公認内部監査人」と訳されている。CIAの取得の必要性について次のように説明する。
「時間的な余裕があるのであれば、CIAを取ったほうがいいでしょう。CIA取得の効果は、2つあります。1つ目は、CIAの資格取得に向けて学習することで、本人の専門的能力がアップし、頭の中で知識を整理整頓できることです。2つ目は、会社の内外に対して、自分の能力を客観的に示せることです」(渡邊氏)
自分の能力をアピールすることは内部監査人にとってきわめて重要だと渡邊氏は強調する。
「内部監査人は、信頼性が命です。信頼されていない内部監査人の助言は、経営陣も被監査部署も耳を傾けてくれないでしょう。プロフェッショナルであることを示すこと、自らの能力を示すことは信頼性を担保するために重要だと考えます」(渡邊氏) 【次ページ】経営陣から信頼される内部監査人の育て方とは?
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