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- 2023/07/03 掲載
物価高騰は「まだ続く」と言えるワケ、日本発のインフレを促す「2つのメカニズム」
連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質
高すぎる物価上昇率…5月も3.2%増
5月の消費者物価指数の対前年上昇率は、3.2%となった(図1、生鮮食料品を除く総合指数)。2023年になってからの対前年伸び率は、1月に4.2%。その後、2月、3月には3.1%と、やや落ち着きを見せた。4月に3.4%と高まったのは年度替わりの影響だと言われていたので、5月にどうなるかを注目していたのだが、あまり顕著には下がらなかった。
総合経済対策で1.2%程度押し下げているので、5月の実態は4.4%程度ということになる。これはかなり深刻な事態だ。
日銀は4月の展望リポートで、2023年度の消費者物価上昇率の見通しを1月時点の1.8%とした。日銀が金融緩和を続けるとしているのは、この見通しに基づくものだ。
ところが、それを超える物価上昇が続くとすれば、金融政策の基本方向も見直しが必要となる。物価上昇率が低いから問題なのではなく、高すぎるから問題なのだ。
20年続いた「物価上昇の仕組み」が一変
2000年ごろからの日本の消費者物価は、消費税率を引き上げたときを除けば、輸入物価の動向によってほとんど支配されてきた。契約通貨ベースでの輸入物価指数は対前年比で、2022年5月に27.7%になったが、その後は伸び率が低下し、2023年4月からはマイナスになっている。円ベースの輸入物価も、4月から対前年比がマイナスになっている。
これまでと同じパターンが続くとすれば、現在の消費者物価の対前年上昇率は0%台、あるいはマイナスになっていなければならない。それに比べると、現実の消費者物価の上昇率は高すぎる。
つまり、今生じている消費者物価の上昇は、海外要因による輸入インフレではなく、国内要因によるホームメイド・インフレになっているのだ。もしそうなら、20年以上にわたって続いている日本の物価メカニズムが変わってきていることになる。
では、なぜホームメイド・インフレが起きているのか?
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