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2023年1月以降、インフレ沈静化や利上げペース鈍化を受け、株式市場はやや楽観に傾いている。日経平均は2023年1月4日終値の2万5,717円を底に上昇し、その後も年初来の高値圏を維持しているほか、米NYダウも3万4,000ドル台を回復するなど落ち着き取り戻しつつある。しかし、ふたたび不安定な環境が訪れることを想定しておく必要がある。今回は、まだまだ荒れることが予想される市場環境を踏まえ、2023年に「利益を出しにくい投資戦略」と「利益を出しやすい投資戦略」を解説する。
米景気減速が日本企業に与える「2つのマイナス」
日本株への影響が大きい米国経済を見ると、2022年7月以降、前月比で一進一退だった小売売上高は11月・12月に2カ月連続でマイナスとなった。それも11月はマイナス1.0%、12月はマイナス1.1%と大きく減少した(図表1)。
同様に個人の消費支出も2カ月連続で減少しており、長引くインフレや金利上昇の影響が出始めていることがわかる(図表2)。米GDPの約6割を占める個人消費の減少が続けば、米国景気が想定以上に悪化する可能性が高まる。
米国景気の減速感が強まると米長期金利が低下し、為替市場で円高が進むと想定される。これは2022年に米金利上昇が急激な円安をもたらしたのと正反対の動きだ。
さらに、日銀の政策修正で円高進行が加速しかねない。4月に刷新される日銀の新体制次第ではあるが、日銀がふたたび金融緩和を強化(利下げ)する可能性よりは、緩和縮小方向に動く可能性のほうが大きいことは容易に想像できる。実際に日銀が政策を変更しなくても、市場参加者の思惑先行で為替相場が動くことはいくらでもある。
そうした状況は日本企業にとってマイナスの影響が大きい。米景気減速でモノやサービスの売れ行きが悪くなる上、円高は輸出企業の採算を悪化させる。つまり、日本株には景気減速と円高のダブルパンチとなりかねない。
現時点で、TOPIXベースの予想EPS(1株あたり純利益)は4.2%増加が見込まれているが、今後、下方修正されて前年比横ばいか、場合によっては減益予想に転じる恐れもある。タイミング的には2022年度の本決算と、2023年度見通しが企業側から発表された後の6月~7月ごろが想定されよう。年央にかけて日経平均が一時2万5,000円を下回るリスクを意識しておきたい。
2023年・日経平均株価の予想レンジとは
ただ、米景気減速は悪いことばかりでもない。需要の減少はインフレを抑制する。原油や天然ガス、工業金属などの国際商品価格が2022年夏ごろをピークに低下傾向にあることもインフレ沈静化につながるはずだ。
年末にかけて市場では早くもFRBの利下げ観測や景気回復期待が高まり、日経平均は2万7,000円~2万8,000円程度まで回復が現時点では期待される。
以上を総合すると、2023年の日経平均は2万5,000円程度から2万9,000程度の範囲で上昇・下落を繰り返すレンジ相場を想定している。まさに、おおむね2万5,000円~2万9,000円のレンジ相場となった2022年と似たような状況だ。
そうした見通しに立つと、おのずと2023年、日本株で「利益を出しにくい投資」と「利益を出しやすい投資」の方向性が見えてくる。
【次ページ】2023年・日本株投資の大予想、「利益を出しにくい投資」とは
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