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サステナブルな社会の実現に向け、金融機関における活動も活発化する中、先進的な取り組みにより注目を集めている地銀がある。それが山陰合同銀行だ。同行は2019年5月に「サステナビリティ宣言」を制定し、カーボンニュートラルの実現に向けた中長期目標を設定。さらに、金融機関でありながら、100%子会社の再エネ発電会社である「ごうぎんエナジー」を設立し、再エネ発電事業に参入している。ここまで環境配慮の活動に注力する理由はどこにあるのか。山陰合同銀行経営企画部サステナビリティ推進室調査役の門脇亮介氏に話を聞いた。
山陰合同銀行がサステナビリティの推進に積極的である理由
山陰合同銀行は2019年に「サステナビリティ宣言」をし、意欲的にサステナビリティに関する取り組みを行ってきた地銀である。この背景には、島根県や鳥取県など山陰地方独自の課題解決の狙いがあると言う。山陰合同銀行の経営企画部サステナビリティ推進室調査役の門脇亮介氏はこう語る。
「私どもが地盤とする島根県・鳥取県を中心とした山陰地方は、人口減少が続き、経済規模もそれほど大きくない、課題先進地域と認識しています。そうした地域が今後、持続可能であるためには、『銀行がしっかりサステナビリティに取り組んでいかなければならない』という使命感と危機感が、根底にありました」(門脇氏)
山陰合同銀行が「サステナビリティ宣言」を掲げたのは、2019年5月であった。ここ1~2年でサステナビリティに対する関心が高まってきたが、2019年の時点での地銀との取り組みとしては先進的と言えるだろう。
山陰合同銀行は、宣言策定以前より環境分野をはじめとするサステナビリティに積極的に取り組んできた金融機関であるが、宣言策定の目的や背景について次のように説明する。
「2015年に国連の定めたSDGsで示された内容は、私ども山陰合同銀行が地域で取り組んできた活動やこれから取り組むべき活動そのものであると考えました。その考えに則って、2019年5月にサステナビリティ宣言を制定して公表しました。宣言公表は、地域と当行が持続的に成長できる社会の実現を目指すため、従業員はもとより地域やお客さまに対してもこれらの理念を広める目的もありました」(門脇氏)
山陰合同銀行の「サステナビリティ宣言」の内容は、大きく5項目に分けられる。「地域経済の持続的な成長」「豊かな地域社会の実現」「持続可能な地域環境の実現」「従業員の満足度向上」「健全で透明性の高い経営体制の確立」である。
この5項目の中で、特に注目すべきなのは「持続可能な地域環境の実現」だろう。この項目では「環境に配慮した企業活動の実践と地域の環境意識を高めることで、気候変動に対応し、持続可能な地域環境を実現します」と掲げられている。
しかし、銀行が本業だけで「持続可能な地域環境の実現」に貢献するのは、限界がある。そこで銀行法の改正を受けて、銀行業高度化等会社として100%子会社「ごうぎんエナジー㈱」を設立し、銀行の本業以外にも積極的な活動を展開しているのだ。
山陰合同銀行が「再エネ発電会社」を設立した狙い
山陰合同銀行が100%出資という形でごうぎんエナジーを設立したのは、2022年7月1日だった。再生可能エネルギーの発電および電力供給が目的の会社だ。銀行自らが事業者となっての参入は金融機関としては全国初の試みとなる。
「持続可能な社会の実現に向けて、私どもが率先して再エネの電源開発を行うべきだろうと考え、『他業銀行業高度化等会社』の許認可を取得し、ごうぎんエナジーという会社を設立いたしました」(門脇氏)
ごうぎんエナジー設立の背景には、山陰地方独自の電力事業に関する課題があった。門脇氏はこう説明する。
「国内でFIT制度が導入され、山陰地域においても県外資本のメガソーラー発電業者が参入し、再エネ発電事業が活性化してきました。ただし、参入企業の多くは県外資本であるため、地域で発電された電気が県内で還流しておらず、経済的にも地域内で還元されていない現状があったのです。地域で発電されたエネルギーは、地域で使ってこそ、地域循環のエコシステムが構築できるのではないかと考えて、電力事業に参入しました」(門脇氏)
ごうぎんエナジーの事業は2つの連携で成り立っている。1つ目は「自治体との連携」である。自治体が持っている公共施設に太陽光発電の設備を設置し、そこで発電される再生可能エネルギーをその公共施設で利用する流れを作ることだ。
2つ目の連携は「取引先との連携」である。銀行の取引先などの工場の屋根、または遊休地で太陽光発電の設備を設置し、「コーポレートPPA」と呼ばれる電気の販売形態を使って取引先に電気を供給する仕組みだ。取引先は再エネを利用することによって、環境価値の高い事業経営が可能になる。
「ただ単に発電事業に関わっていくだけでなく、地域の事業者によるサステナビリティの取り組みを、後押ししたいと考えています」(門脇氏)
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