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  • 2022/12/13 掲載

仮想通貨事業に立ちはだかる「各国規制の壁」、最大手バイナンスはどう日本進出する?

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世界最大級の仮想通貨交換業者であるバイナンスが、日本の仮想通貨取引所を買収した。同社は日本市場に着実な足がかりを得る一方、バイナンス本体での日本人の取引は制限されることになった(新規の口座開設は不可)。ビットコインは本来、国境を持たない存在だが、各国の通貨当局との利害対立から地域ごとの分断が進んでいる。
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バイナンスが日本の仮想通貨取引所を買収し、日本市場への足がかりを得る一方、バイナンス本体での日本人の取引は制限されることになった
(Photo/Getty Images)

仮想通貨はもともと無国籍だった

 バイナンスは世界最大手の仮想通貨取引所の1つで、日本人の利用も多かった。ビットコインをはじめとする仮想通貨はもともと国家の規制を受けない存在であり、多くの利用者は企業の国籍に関係なくサービスを利用していた。だが、こうした仮想通貨の無国籍性は、金融システムを管理する各国の規制当局には邪魔な存在に映る。

 銀行や証券といった既存の金融サービスは、当局の規制対象となっており、顧客の資産管理、商品の提供など業務のあらゆる面で制約を受ける。ところが仮想通貨の場合、顧客が利用するサービス拠点が国内にあるとは限らない。

 各国のサービス事業者が、それぞれ外国人の顧客から資金を受け入れてサービスを提供すれば、事業者に規制を加えることができなくなり、顧客の保護はすべて事業者次第になってしまう。こうした状況では、政府による投資家保護が事実上、有名無実化することから、各国政府は仮想通貨に対する規制強化を進めてきた。

 もっとも、各国政府が仮想通貨事業者に対して規制を強化するのは、投資家保護だけが目的ではない。各国政府が保有している金融覇権を維持したいという政治的な理由も大きい。

 通貨当局が管理できない通貨が増えれば、各国の中央銀行が持つ力は大幅に抑制されてしまう。たとえば、経済が混乱しているような途上国では、自国通貨ではなくドルの方が通用しやすいケースもあり、そうした国の中央銀行はもはや十分な権力を有しているとはいえない。

 仮想通貨の時価総額は約70兆円と、既存の金融システムの大きさとは比較にならないが、市場がさらに成長した場合、無視できない存在となり得る。各国の通貨当局は通貨管理を通じて大きな利益と権力を得ており、仮想通貨はこれを脅かす存在とも言える。

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仮想通貨の無国籍性は、金融システムを管理する各国の規制当局には邪魔な存在に映る
(Photo/Getty Images)

各国で微妙に異なる規制に対する考え方

 規制を強化すると言っても、国際社会は狡猾であり、いかに自国の利益になるのかという駆け引きが行われる。たとえば米国は圧倒的なドル覇権を持つ国であり、これを維持することは絶対条件と言える。米国は既存の通貨においても、国内への資金流入については寛容であり、資金の流出には極めて厳しいという特徴がある。

 仮想通貨についても似たようなスタンスであり、米国内では比較的自由に取引が可能であり、イノベーションの状況を見ながら順次規制を加えていくというスタンスだ。一方、米国人が海外の取引所で取引を行うことは厳しく規制しており、資金の流出に神経を尖らせていることが分かる。

 一方、欧州は米国よりも規制が緩く、米国と比較すると既存の金融機関との資金のやり取りも、ある程度までは許容されている。欧州は米国のドル覇権を崩したいと考えており、仮想通貨を全面的に規制することは得策ではないと考えている。加えてウクライナ侵攻をきっかけにロシアに対する経済制裁が行われており、国内で圧迫を受けるロシア人が仮想通貨を使って国外に資金を退避させるというケースも散見される。



 欧州にとっては、仮想通貨によるロシアからの資金流出を容認した方が、ロシアの弱体化につながる面があり、単純に自国の金融システムのことだけを考えれば良い米国とは立場が異なると考えて良いだろう。

 日本はさらに規制が厳しく、日本人が海外の取引所を利用できないよう、かなり早い段階から各国の事業者に対して事実上の要請を行ってきた。海外にある大手仮想通貨事業者の多くは、日本政府の意向を受け入れ、日本人の口座開設を制限している。

 だがバイナンスだけは例外で、最近まで日本人の資金を積極的に受け入れてきた。バイナンスは世界大手ということもあり、サービス水準が国内事業者よりも圧倒的に高く、多くの日本人がサービスを利用していた。金融庁は2018年にバイナンスに対して、無登録で日本居住者向けにサービスを提供しているとして警告を出し、この措置を受けて同社は当時計画していた日本国内での拠点設置を断念している。

【次ページ】バイナンスは日本でどうサービスを提供する?
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