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- 2024/02/19 掲載
ダイハツと豊田自動織機の不正に見る昭和企業の「古い組織風土」、その根深い原因とは
連載:大関暁夫のビジネス甘辛時評
ダイハツ不正に見る「根深い」問題
現在筆者は、たまたま大学で企業不祥事と組織風土の関係を研究して論文にまとめており、今回の不祥事に関しても専門的な見地から第三者委員会の報告書を読み込み、分析しました。企業不祥事というと、昨年世間を騒がせたビッグモーターの一件が記憶に新しいのではないかと思います。
ビッグモーターはオーナー系の非上場企業で、創業家一族によるワンマン経営と取締役会さえ開催されていなかったというガバナンス不全が調査報告書で指摘されており、経営陣の歪んだ指示・命令を野放図にしたことの最大の原因でありました。組織の頂点に立つトップや実権者の暴走は、不祥事発生の原因として最も危険なものと言えるのです。
一方で、ダイハツ工業も豊田自動織機もオーナー経営ではない、完全な「サラリーマン組織」であり、特定のワンマン経営者が長期にわたって経営を牛耳ってきたという状況にもありません。
しかし、調査委員会や監督官庁が不祥事の実態を調査した報告では、その根本原因として「組織風土に問題あり」という指摘がなされているのです。
一体なぜ、強権経営ではないサラリーマン組織において、不祥事を起こすような組織風土が生まれてしまうのでしょうか。その点に関してダイハツ工業の調査報告書を読み解きながら、筆者の研究をふまえて少し解説してみます。
調査報告書が指摘する「不正原因」とは?
さらに、2016年のトヨタの完全子会社化以降、グループ内でのアジア向け小型車戦略の強化によってその短納期開発が一層強く求められるようになり、対応に苦慮した現場が不正に手を染めていったといいます。同時並行して、全社的な一層のコストカット方針の徹底により、人員削減の波が非収益部門である品質保証部門にしわ寄せされます。2022年時点での安全性能担当部署の人員は、2010年比で3分の1になっており、開発納期を守るためには不正に頼らざるを得ないという状況を生んでいったのです。
このような、言わば「強い本社」による「物言えぬ現場」の創出が不祥事発生に至らしめるという構図は、三菱自動車、神戸製鋼所、日立化成、三菱電機、日野自動車など、2000年代以降に不祥事発覚に揺れた昭和由来の大企業たちに共通するものでもあると言えます。
そして、「強い本社」の存在はある意味で、日本の昭和の企業統治の象徴とも言えます。
本社優位の組織統制は、戦前の官制組織のそれを引き継いでいると考えられます。戦後の日本企業の組織統治は、官制組織を模するところからスタートしており、経営者の下で本社が指示命令を司り現場はこれに従うという主従関係が、業界を問わず受け入れられてきたのです。
日本の企業経営の「常識」として理解されてきたこの手法は、高度成長の波に乗って企業が成長を続けたことで、省みる機会を逸してしまいました。そしてバブル経済の崩壊を経てなお、一部の企業では低成長の時代にもその精神が生き残り、今も脈々と続いているのだと推察されます。 【次ページ】現場が何も言えなかったワケ
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