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  • 2023/10/05 掲載

なぜ『ソニック』は北米で爆売れ? 熱狂を生む「SEGA流マーケティング」のスゴイ裏側

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右肩上がりに成長し続けるゲーム業界。その中でも、最大の市場規模を誇る北米市場で、強いブランド力を持ち、熱烈なファンを数多く抱えているのが「SEGA」だ。最近では、同社の主要IP(知的財産)である『ソニック』を原作とした映画『Sonic the Hedgehog』の第1弾(2020年公開)、第2弾(2022年公開)が北米で大ヒットし、大きな話題を呼んだ。日本での存在感はそれほど高くはないが、北米ではポケモンやマリオと並ぶほどの人気だ。なぜ、ソニックは北米の若者の心を掴んでいるのか。絶好調のセガで、代表取締役副社長を務める内海州史氏に話を聞いた。
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なぜ、『ソニック』は、これほど北米で人気なのか? そこにはSEGA流のマーケティングが大きく関係していた

セガ絶好調の理由

──現在、セガさんが好調というのが、失礼ながらちょっと意外でした。2015年にリストラを断行、サンフランシスコ拠点を閉鎖しています。近年、パチンコ・パチスロ事業もそれこそリゾート事業もコロナ禍で大打撃を受けており、2020年にも再度リストラをしたり、祖業でもあるアーケード(ゲームセンター)部門の施設運営事業を売却しています。

内海州史氏(以下、内海氏):私の見ている海外文脈で言うと、セガは看板キャラクターであるソニックに救われたところがあります。特にパラマウント映画『Sonic the Hedgehog』(2020、興収3.2億ドル)、『Sonic the Hedgehog 2』(2022、興収4.05億ドル)のヒットがブランド力を高め、お陰で再びいろいろなチャンスにつながってきている状況があります。2024年には第3弾となる『Sonic the Hedgehog 3』の公開も予定されています。

 さらに、家庭用ゲーム産業自体がコロナ禍の追い風を受けつつ、これまで進めてきた構造改革の成果もあって、さまざまな事業が好転してきている感じがあります。

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セガサミーグループの売上の推移
(出典:各種公表資料より筆者作成)

──現在、絶好調のセガですが、セガ黄金時代とされる1990年代の水準に売上は戻ってきているのでしょうか?

内海氏:それはまだです。家庭用ゲーム機『ジェネシス(GENESIS)』(日本向けは『メガドライブ』)を販売していた時代(注1)は、ソニックがマリオに並んでいた時期すらありました。現状、まだそこまでは到達していない認識です。

 とはいえ、2000年代の低迷していた時期から見れば、現在は好調に売り上げが伸びてきています。昔と大きく違うのは、ヒットの仕方ですね。ゲームだけだった当時と比べて、今はテレビアニメも映画もあるし、『ROBLOX』とのコラボ成功なども含め、成長の波が“太く”仕上がってきている。これは20年前のセガにはなかった現象ですね。

注1:1988年、日本向けには『メガドライブ』として、北米向けには『ジェネシス(GENESIS)』として販売された、セガ発の3度目の家庭用ゲーム機。世界で3000万台以上売れた。ファミリーコンピューターの販売記録6000万台と比較すると、日本市場では勝負にならなかったが、米国市場では任天堂よりもシェアが大きかった。

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セガ
代表取締役副社長
内海州史 氏
一橋大学経済学部卒業、ペンシルバニア大学ウォートン校(MBA)卒業。1986年ソニー、1994年 Sony Computer Entertainment of America、1996年 Sega of America、2000年ディズニーインタラクティブ アジア日本代表(VP and Managing Director)、2004年キューエンタテインメント設立、2014年ワーナーミュージックジャパン代表取締役社長、2016年ユーキャスト・ラボ 代表取締役社長を務め現職。

ソニック人気はどこから? セガ流マーケティングとは

──今年、ゲーム原作映画のハリウッド版として、興行収入約14億ドルを記録的したマリオや、絶大な人気を誇るポケモンと並び、ソニックもゲーム原作映画の歴代トップ10に入っています。しかも地域別に見てみると、2022年公開の『Sonic the Hedgehog 2』は、さすがにマリオの5.7億ドルには敵わないまでも米国で1.9億ドルと『名探偵ピカチュウ』(1.4億ドル)よりも売れているんですよね。日本発なのに、ここまで人気が北米中心に偏っているキャラクターは、ほかにありません。

内海氏:日本のゲームキャラの中でも、実はソニックはマリオやポケモン級に北米で浸透しています。ただ、メガドライブ(1988年発売)が日本でそれほどヒットしなかったこともあり、日本での知名度が限定的である点に課題があります。

 これだけ海外メインで売れているキャラクターになると、日本側で開発・マーケティングを担当する人間が“売れている”という実感を得られません。腑に落ちない中で施策を打っていくのは難しいですよね。

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急成長する日本発のゲーム原作映画の状況
(出典:各種公表資料より筆者作成)

 一方、北米ですとソニック自体がセガの顔になっています。かつての黄金時代のセガで、トム・カリンスキー氏(注2)が意識的にブランディングしてきた結果でもありますが、ゲーム機は「ファミリー向けのコンピューターであり家族で楽しむものだ」という任天堂の考え方に対して、ソニックとセガは「ちょっと背伸びした不良っぽいイメージ」が強いんです。任天堂がコカ・コーラだとするとセガがペプシと言いますか。色もちょうど赤と青ですしね。

 そういう英語で言うところのRebellious(反抗的)っていうスピリットが今も北米ユーザーの中に強く残っていて、現在も各局面でそれをどう匂わせていくかというブランディングには気を付けているところですね。

注2:世界最大規模の玩具メーカーマテルの元CEO、セガ創業者である中山隼雄氏がヘッドハンティングし、1990~1996年にSEGA of Americaの社長としてセガ北米展開の絶頂期を創り上げた人物。
【次ページ】『ソニック』はどれだけ業績に貢献してる? 凄すぎる実績
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