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- 2023/06/23 掲載
EV普及で「雇用」が激減? 自動車各社が今すぐするべき「ある宣言」とは
連載:EV最前線~ビジネスと社会はどう変わるのか
EV普及と雇用減少の関係とは
EVがエンジン車ほど多くの部品を必要としないことが、将来、車両を組み立て完成させる自動車メーカーに止まらず、要素部品を製造する下請けの製造業にも影響を及ぼことは必至だ。部品点数がエンジン車に比べ少なくなるEVの普及は、自動車関連の製造業に従事する人々の雇用を危うくするとの声が出るのも、ある意味で当然といえる。国内の就業人数は2019年で6700万人強だ。自動車業界の就業者が、日本自動車工業会(以後、自工会)の豊田章男会長の発言によると約550万人とのことから、試算すると、就業者数の8.2%を占めることになる。
自工会の会見で豊田会長は、菅政権での2050年にカーボンニュートラル実現の目標には全面的に協力するとしながら、現状を急激に変化させるEV一辺倒といった風潮には警鐘を鳴らす。その発言には、単にEVへの移行だけでなく、火力発電への依存度が高い日本では製造時に排出される二酸化炭素量の多さがネックとなって、国内生産が難しくなるとの視点も含まれている。
では、自動車関連産業における雇用の危機とは、実際どうなのかを改めて検証してみよう。
EVはこれまでの自動車部品が「不要」な乗り物
確かに、エンジン車に比べEVは、必要な自動車部品が減る。より詳細に具体例を挙げると、エンジン本体はもちろんのこと、それに燃料を供給する部品、エンジン内でガソリンを燃やすための点火系部品、燃焼後に排気を外へ導く配管と、その排気を浄化する触媒、また、ガソリンなどの液体燃料を携行するタンクが、EVではいらなくなる。それらの装置や機器には、それらを構成する数々の細かな部品、たとえばネジ1本に至るまで使われているわけで、それらも合わせてEVでは不要になる。
エンジン内部では、金属製のシリンダーとピストンの往復運動を順調に行わせるための潤滑油が必要で、摺動中に混入する金属粉などを取り除くフィルターも用いられているが、これらも不要になる。潤滑油は、定期的な交換が必要な消耗品である。
エンジンは、燃焼温度が700~800℃に達するため、これを冷却するための冷却水と、ラジエーターが必要で、冷却水を循環させるポンプも併せて不要になる。
エンジンからの動力を車輪へ伝える変速機も不要だ。EVでも、モーター回転力を減速し、力を増大させる減速機は必要だが、加速に際してギア比を変える変速機はいらなくなる。変速機には、変速段数に応じた歯車が何枚も使われている。それらも必要なくなる。
燃料タンクは、タンクだけでなく、そこからエンジンへ燃料を送りだすためのポンプと、配管が必要で、さらに細かく言えば燃料に混入した不純物を取り除くフィルターがある。それらが不要になる。
エンジン車を走らせるために必要な関連機器や部品、あるいは交換部品は驚くほど多く、書いていてキリがないくらいだ。EVではこれらが不要になるので、新車の設計から開発、そして各部品の製造、組み立てといったあらゆる工程で働いてきた人々の仕事が、なくなっていくことを実感せざるを得ない。 【次ページ】EV生産への「リスキング」はすでに行われている?
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