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  • 2022/09/05 掲載

日本の「キャッシュレス」の現在地とは? 金融立国の英国と比較してみえてきたもの

FINOLABコラム

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英国の銀行や金融サービスセクターの業界団体であるUK Financeはこの8月、自国の決済について現状をまとめた調査レポート「UK PAYMENTS MARKETS」の2022年版を発表した。このレポートは、2021年時点での英国における決済事情や過去からのトレンドを理解するのに役立つが、それ以上に日本のキャッシュレス推進をめぐる今後を予想する参考になりそうだ。日英比較で見えてきた事象を解説する。
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日本のキャッシュレス推進の今後を占う、「金融立国」英国との比較について解説する
(Photo/Getty Images)

決済総件数の回復と手段別の変化

 2020年には、コロナ禍の行動制限の影響もあって決済の全体件数が前年比減少していたが、2021年には、404億件(国民1人あたり約600件)とコロナ発生前の水準に戻っている。決済手段別の変化は以下のグラフの通りであるが、それぞれについて特徴的な変化を説明していきたい。

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2021年の英国における決済方法別の件数(単位:百万件)
(出典:UK PAYMENT MARKETS SUMMARY 2022)

・現金利用件数の減少
 現金による決済の全体件数に占める割合は、2011年に55%、2016年には40%であったものが、2021年には15%まで減少しており、キャッシュレスが進展していることがわかる。ただし、前年との比較においては件数変化があまりみられなくなっており、現金利用の岩盤に近づいているのではないかという見方も出ている。

 件数変化とともに、消費者の意識が大きく変化していることも事実で、2020年には1370万人だったキャッシュレス派(現金利用が月1回以下)が2021年には2310万人に増加しており、キャッシュレスが定着しつつあることが明らかになっている。

・デビットカード利用の増大
 2021年には決済の全体件数に占める割合が48%と、英国内で最も利用される決済手段である。2020年にはコロナ禍の影響もあって利用件数が減少していたが、2021年には前年比23%の増加となっている。

 この背景には、銀行口座開設とともにキャッシュカードの機能を併せ持ったカードとして発行され、銀行免許を持たないネオバンクによる発行も可能な「デビットカード」が基本的な決済手段として普及していることがある。デビットカードは英国の成年人口の97%が保有するにまでになった。

・クレジットカードの利用
 決済の全体件数に占める割合は、2021年に8%に留まるクレジットカードであるが、少額決済はデビットカードを利用し、高額となるとクレジットカードを使用するというように使い分けられる傾向がある。保有率でみると、クレジットカードは成年人口の66%に達している。

・コンタクトレス決済の利用拡大
 決済の全体件数に占めるクレジットおよびデビットカードによるコンタクト決済の割合が、2015年に3%、2018年には19%であったものが、2021年には32%まで増加している。発行済のデビットカードの91%、クレジットカードの89%がコンタクトレス決済の機能を搭載することに加え、利用が拡大しているトレンドには、以下の背景が指摘されている。

  • 利用上限が50ポンドから100ポンドに引き上げられ、大部分の日常の買い物が可能となった。
  • 小売チェーンなどが現金の取り扱いを減らすために、コンタクトレス決済の利用を推進した。
  • コンタクト決済処理が可能な小型決済端末が普及し、小規模店舗にも導入された。
  • 利用が可能な場所が増えたことによって、消費者の認知度が高まった。
  • Apple PayやGoogle Payなどの普及もあり、モバイル端末での利用が拡大した。

・モバイル決済の利用
 前述のモバイル決済について2021年の段階で、成年人口の32%がApple Pay、Google Pay、Samsung Payなどのモバイル決済にデビットカードやクレジットカードを登録しており、92%は実際に利用経験があるという。特に若年層の16-24歳では60%が利用しており、高齢者の65歳以上の利用12%とはっきり差がついている。

・口座振替
 公共料金の支払いや住宅ローンの返済、ジムなどの会費支払いに利用されるケースが多い口座振替は、2021年に決済の全体件数に占める割合が11%と、年々その利用者は微増傾向にあり、英国内の口座保有者の9割以上が利用している。

・小切手
 2006年には年間17億枚の小切手が利用されていたが、2021年には1億5000万枚まで減少している。もともと2011年にPayment Council(英国内の決済に関する取組みを決めるための業界団体)が2018年に小切手交換のシステムの利用を停止する方針を発表していたが、高齢者を中心に影響が大きく、見直された。その後、運用停止の時期についての発表はないが、小切手の利用減少は続いている。

【次ページ】日本の「キャッシュレス」と比較してみえてきたもの
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