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銀行業界は今、中途採用、特に専門人材への採用意欲が旺盛で、若い世代だけでなくミドル・シニア層にも転職のチャンスが広がりつつあります。ただDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速に伴い、各社の採用戦略は、リテール・営業要員を雇用するという従来のイメージから、様変わりしています。リクルートエージェントの金融領域専門キャリアアドバイザー水谷努氏が、年代別の「求められる人材」について解説します。
「新卒一点張り」から、専門人材の中途採用へ
銀行各社が求める人材は、一言で言えば「専門職」へとシフトしています。
一昔前の銀行・証券は、高学歴・体育会系のプロパー新入社員が主流で、その大多数はまず支店営業に配属されました。しかしコロナ禍を機にDXが加速する中、新卒採用も続ける一方で、専門的なスキルを持つ転職者を採用する動きも活発化しています。
求められる領域は、DX分野のほか事業企画やプロジェクトファイナンス、M&A、リスク管理、コンプライアンスなど多岐にわたります。さらに言えば、採用側には専門性に加えて「組織を変革してくれる人材」に入社してほしい、という期待も高まっています。
ここからは年代別に求人・求職の動向を見ていきましょう。
専門性を獲得、転職意欲は数年前より落ち着く
企業側では、若手の採用意欲は旺盛です。第二新卒の同業他社への転職なども、一定程度はコンスタントに起きています。
ただ銀行業界の若手社員の転職意欲は、数年前に比べて落ち着いています。金融各社が育成システムを変え、若手の活躍の場を広げたことが要因の1つです。
現在は、銀行業界が専門人材を求めているだけでなく、若手側も「ゼネラリストになるより、キャリアの早いうちから専門的なスキルを身につけたい」と考える人が増えています。
このため人事サイドも、若手を支店営業に回してゼネラリストに育てる…といった従来のやり方から、投資銀行業務やシステム分野など専門領域をある程度定め、各分野の「プロ」に育てる方向へと、仕組みを変えつつあります。
優秀な若手に裁量範囲の大きな業務をアサインし、給与を引き上げる動きも出ています。人事サイドが若者のニーズに応えようと努めた結果、若手も会社に留まるという、よいサイクルのマッチングに至っていると言えそうです。
【30代】次世代の幹部候補、高い採用ニーズ
企業側の動きとしては、退職などで支店長・部長級のポストに空きが出つつある中、銀行各社は30代を中途採用して「次世代の幹部候補」を育てようとしています。コンサルティング会社でプロジェクトマネジメントに関わるなど、他業界で専門的なスキルを蓄積した人材も歓迎されています。特に、こうした外の業界から入って来る人に対しては「職場を変革してほしい」という期待も大きいと感じます。
DXやコロナ禍に伴うリモートワークの普及など、社会環境が急激に変化する中で、金融業界全体でも「変わらなければ」という危機意識が高まっています。しかし自社でしか通じないロジックや組織内のしがらみは、内側からはなかなか変えられません。だからこそ、職場に外の風を入れ、刺激を与えてほしいというニーズが高まっているのです。
一方、求職者としての30代は、流動性の高い20代と数が減りつつある40代に挟まれ次世代幹部候補として期待されています。転職には非常に有利な立場にいます。業界内の移動だけでなく、SDGsやDXなどの特定分野を極めようと、コンサルなどの異業種へ移る人もいますし、金融機関の持つ圧倒的な情報量や資金力に魅力を感じ、異業種から転職してくる人も増えています。
【40代】20年培った能力を「棚卸し」で明確に
企業側の動きとしては、プロジェクトファイナンスやM&A、エンジニアなど専門職の採用意欲は引き続き旺盛で、同業他社のほか監査法人やコンサルなど、異業種からも人材を受け入れています。ここでは40代の転職事例のうち異業種から金融へ、そして金融から異業種へという、2つのパターンをご紹介しましょう。
【次ページ】40代の転職事例と50代の「ニーズ」とは?
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