- 会員限定
- 2024/12/02 掲載
Web広告ビジネスの終焉……ChatGPTの超進化で陥った「グーグルの自殺行為」とは
連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質
ChatGPTによる情報収集が超進化
2022年11月に登場した当時のChatGPTは、それまで学習した範囲の情報を基にして回答を作成していた。したがって、最近の事象については答えることができなかった。それにもかかわらず、学習していなかった内容に対して誤った回答を出すことがあり、ChatGPTの信頼性を著しく傷つけていた。こうした状況はその後、改善された。2023年5月からプラグイン機能が利用できるようになった。その中には、Webを検索するものもあった。これを利用すると、関連サイトを知らせてくれて、その概要なども教えてくれる。
ただこれは、通常の検索エンジンと同じようなものであり、これによって情報収集機能が各段に向上したとは言えなかった。
ところが、2024年になってから、これがさらに進化。いちいちプラグインを利用してWebを検索するように依頼しなくても、必要であれば自動的にWebを検索し、その結果を取り入れて、質問に対する答えをまとめ上げてくれるようになった。その説明の一部についてより詳しい情報を求めると、それに対しても答えてくれる。これによって、情報収集が著しく容易になった。
こうして、知りたいことに絞って詳細な情報を教えてくれる。その反面で、質問したこと以外の情報はないので、情報収集が極めて効率的になった。
生成AIは「もの知り博士」、検索エンジンは「司書」
従来の検索エンジンは、キーワードが含まれているサイトを示すだけで、質問そのものには答えてくれない。いわば、どの本を読めば良いかの助言をしてくれる「図書館の司書」のようなものだ。司書が提供する「レファレンスサービス」とは、利用者の質問や相談に応じて、必要な書籍を探す手伝いをしてくれることだ。利用者の質問に対する答えの「ありか」を示すだけであって、利用者の質問そのものに対して直接に答えるわけではない。
隔靴掻痒(かっかそうよう)という、物事が思うように進まずもどかしい様子を意味する言葉があるが、まさにその通りだ。知りたいことに関連する事項を示してはいるのだが、知りたいことそのものについて答えるわけではない。
この意味で、従来の検索エンジンは、不完全なものであったということができる。
これに対して、博識な人、つまり「もの知り博士」は、質問者が聞きたいことに対して、直接に答えてくれる。質問者が、その答えの一部について詳細に知りたいと言えば、それにも答えてくれる。最近のChatGPTは、もの知り博士と同じような答えを出してくれるようになった。
答えが含まれているサイトを示すのではなくて、答えそのものを教えてくれる。そして質問者がその答えに満足せず、さらに質問を追加すれば、それに応じた答えを出してくれる。これは、従来の検索エンジンとはまったく違うものだ。
しかもChatGPTは、もの知り博士とは比べ物にならないほど大量にある情報源の中から答えを引き出してくれる。だから、人間の情報収集能力は劇的に向上したと評価することができる。 【次ページ】自殺行為な「グーグルの変貌」
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR