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2023年の暗号資産税制改正では、自己発行自己保有分の暗号資産が法人税の期末時価評価課税の対象外となった。さらに、発行者以外の法人が保有する暗号資産についても、期末時価評価課税の見直しが検討され、令和6年度税制改正に向けた要望が提出された。暗号資産の中期的な発展には何が必要か? 前金融庁総合政策局参事官(信用制度担当)大来志郎氏と日本銀行決済機構局FinTech副センター長 鳩貝淳一郎氏が対談した。
なぜ規制当局は「一歩踏み出した」?
鳩貝氏:暗号資産税制について、自己発行自己保有分は、法人税の期末時価評価の対象から一定の要件のもとで除外されるなど2023年の改正で、規制当局として一歩踏み出されたということかと思います。その後の動きについてお教えください。
大来氏:2023年6月以降の動きとしては、暗号資産やブロックチェーンの関係団体からは、発行者以外の法人が保有する暗号資産の期末時価評価課税、という法人税に関する問題が提起され、金融庁として、この点について令和6年度税制改正要望を提出しました。
税制改正プロセスの中では、事業者や関係団体の意見・要望も踏まえながら、しっかりとこの問題の解決の必要性や、その場合の具体的な手法のあり方などを主張し、一定の条件を満たすものについては期末時価評価課税の対象外とする見直しが実現しました。
これら過去2年の税制改正措置はわが国でトークン発行を行う際の課題の一部を解決するものと考えており、事業者の皆様には是非、有用な、あるいは革新的なビジネスの発展に役立ててもらいたいと思います。
こうした単年度の取り組みを越えて、暗号資産税制全般が中期的にどのように発展していくかについては、暗号資産が広く国民の間でどのようなものとして受け止められるかによってくる部分も大きいのではないかと思います。
利用者が安全にサービスを利用できる状況の醸成やマネーローンダリング対応の充実など周辺環境の整備も重要ですが、何にもまして暗号資産ビジネスが、社会経済の諸分野の発展を陰に陽に支えていることが広く国民の間で感じられるようになることが大事ではないかと考えています。
ステーブルコインは「結節点」として機能できるか?
鳩貝氏:暗号資産というものに対する国民の受け止めも重要な要素であり、それだけに、安全にサービスが利用できる環境の一層の整備などが業界の側にも求められるということですね。制度改正から1年が経ち、事業者の側にもこれらの改正を踏まえた動きがでてきていますね。
ていねいにご説明を頂いて、かなり理解が深まったように思います。金融庁のこれらの取り組みが、web3.0的世界の金融サービスや、ひいては既存の金融サービスの発展にどのように貢献するとお考えでしょうか。
大来氏:やや投機色の強い盛り上がりを見せていたような暗号資産ビジネスはひと段落し、いかに実用性のある価値を暗号資産に付与するかが重要な局面に移行しつつあるのではないかと考えています。
もちろん、暗号資産は従来と同様、ゲームやエンタメとの親和性は高いので、引き続きこの分野の発展には期待が寄せられていますが、そうしたところにとどまらず、少子高齢化や地球温暖化など社会課題の解決につながるような、手触り感のあるユースケースが生まれ、それが国民の間に広まっていくと、さらにエコシステムの好循環が生み出されうるのではないかと感じています。
一方、ステーブルコインに関しては、暗号資産よりは安定的な決済手段の側面が強く、ビジネスや取引の結節点として機能することを期待しています、と、私は思うのですが、この点、鳩貝さんはどう考えていますか?
鳩貝氏:おっしゃるように、ステーブルコインが「結節点」として機能し、ブロックチェーンの上のエコシステムに影響を与えるのだろうと思います。
パブリックブロックチェーンの上にはスマートコントラクトで構築された分散型金融の仕組みが存在し、暗号資産が交換されています。また、既存の金融との関わりでは、金融資産などのトークン化の提案があります。今後、現在の私たちでは想像もできないようなデジタルアセットが生まれるかもしれません。
仮に、こうしたアセットサイドの進化がさらに進む場合には、「アセットと同じプラットフォームに乗った資金」というものに対し、社会的ニーズが高まるかもしれません。
ステーブルコインが、制度改正により安心して使える存在となれば、アセットサイドの進化とともに活用され、こうした金融サービスの進化をますます下支えする存在になるかもしれませんね。
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