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- 2024/02/06 掲載
【徹底討論】ステーブルコインに「固有の課題はない」、では何が妨げになっているのか
連載:ステーブルコインの実際
ブロックチェーン技術を用いた地方創生の好例
三根公博氏(以下、三根氏):Web3の文脈からステーブルコインで地方創生を図ろうとする動きは、今後ますます増えそうですが、この点について考えを教えてください。齊藤達哉氏(以下、齊藤氏):「ステーブルコインによる地方創生」というテーマの解像度を上げたほうがいいでしょう。テーマの意義と「置換が簡単」か、つまり「ホワイトスペース(ビジネスモデルの空白地帯)があるかどうか」が重要です。
そもそも、地方創生はステーブルコインを中心に据えて成し遂げるものでしょうか? たとえば「外国人観光客向けにインバウンド決済をシームレスにすること」はニーズがありますが、それはクレジットカードでも可能です。
また、「地域振興券」を彷彿(ほうふつ)させる地方創生の案件をみると、それは(分散型金融のスキームではなく)「地方公共団体の信用で運用する」という話であり、「ブロックチェーンでアドレスがどこでも移転できる」というような、移転の柔軟性は必要がないようなケースもあります。
振興券がデジタルに代わる話ではなく、「誰でもアクセスでき、どこにでも送れるパーミッションレスブロックチェーンであること」でないと、本来的な価値が出せません。
一方、ステーブルコインを含めたブロックチェーン技術を用いた地方創生のケースとして何があるのかというと、新潟県の山古志村のDAOのような例は意義があり、かつホワイトスぺースでしょう。
さまざまな貢献に対して、何らかリワード(報酬)を与えたいという際に、今までの決済手段だと、柔軟に報酬が渡せず、報酬を提供する相手方が必ずしも日本人だとも限らないケースで、ステーブルコインは有効です。
「特定のKYCされた人でなくても、そのコミュニティーに参加できます」という点が、一番意義があり、その際に使える決済手段を想定する場合には「パーミッションレスステーブルコイン」でないと、用をなしません。
パーミッション型で運用するのなら、今までの法定通貨の決済でもできなくはありません。地方創生で意義を出すとすれば、ステーブルコインを用いる意義かつホワイトスぺースがあるという意味で、パーミッションレスで運用したほうが良いと思います。
プログラマビリティーでトークンエコノミーの仕組み実現
三根氏:ステーブルコインは、個人と法人のどちらに相性がよく、ヒットを狙えそうでしょうか?藤井達人氏(以下、藤井氏):完全にユースケース次第という気がします。プログラマビリティー(コンピュータプログラムにより制御できる性質)を備えたステーブルコインが発行されて、Web3のさまざまな技術と組み合わせることで、そのトークンエコノミー(暗号資産などのトークンにより生まれる経済圏)と相性のいい仕組みを作れます。
さらにブロックチェーンの持つトレーサビリティー(追跡可能性)を活用できるので、サプライチェーンファイナンスのようなB2Bの仕組みとも相性がいい点はよく指摘されます。
ただ、法人間の仕組みでブロックチェーンベースのものを適用しようとすると、各法人がそこに参加して、今までの仕組みから切り替える必要がありますし、ブロックチェーンネットワークに参加するためにノードを立てる必要もあります。サービスの立ち上げには時間がかかるでしょう。
その点を加味すると、ビジネスとして立ち上げやすいのは個人向けかもしれません。たとえば、先ほどの地方創生の一環として、「地域コインを電子マネーで運用する代わりにステーブルコインに替えてみる」という事例も現れそうな気がします。
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